60歳以降の雇用の型を比べる:再雇用・勤務延長・定年廃止

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目次

  1. まず押さえる2つのルール
  2. 比較表で見る3つの型
  3. 再雇用の条件はどう決める?
  4. 年金と賃金のバランスも見ておく
  5. 現場で起きやすい落とし穴
  6. 制度づくりの進め方
  7. まとめ
  8. 合わせて読みたい

「定年を迎えたベテランに、もう少し働いてもらいたい。でも給料や役割はどう決めればいいのだろう」。人手不足が続くなか、こんな相談がじわじわ増えています。本人は元気で意欲もある、会社も戦力として頼りにしている。それなのに制度が追いついていないと、お互いにもやもやしたまま再雇用の面談を迎えることになります。この記事では、60歳以降の雇用の型を比較表で並べ、法律で決まっていることと、制度の作り方の考え方を順に整理します。

まず押さえる2つのルール

高年齢者雇用安定法には、年齢に関わる2段階のルールがあります。

1つ目は、65歳までの雇用確保措置(義務)です。会社は次の3つのうち、どれかを必ず実施します。

  • 定年を65歳まで引き上げる
  • 定年そのものをなくす
  • 継続雇用制度(再雇用や勤務延長)を65歳まで設ける

2つ目は、70歳までの就業確保措置(努力義務)です。2021年4月から、会社は70歳までの就業機会の確保に「努める」ことが求められています。義務ではありませんが、法律に書かれた方針であり、今後の人材確保を考えるうえで無視できない流れです。70歳までの措置には、70歳までの定年引上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度のほか、業務委託契約を結ぶ制度や社会貢献活動に参加できる制度(創業支援等措置)も含まれます。

比較表で見る3つの型

65歳までの雇用確保措置の3つを、型として並べて比べます。

比較項目 定年再雇用 勤務延長(定年引上げ) 定年廃止
仕組み 定年で一度区切り、嘱託社員などとして新たに契約する(継続雇用制度) 定年年齢を引き上げ、区切りなく雇用を続ける 年齢による区切りそのものを設けない
条件の切り替え 60歳前後で賃金や役割を見直せる 雇用条件が切り替わらないため、本人の安心感が高い 雇用条件が切り替わらない
人件費の見通し 柔軟に設計できる 負担が長く続く 負担が長く続く
注意点 条件の説明が不十分だと不満が出やすい。同じ仕事で賃金だけ大きく下げると、待遇差の説明が求められる場面がある 人件費の見通しや若手の育成計画と合わせて考える 人件費の見通しや若手の育成計画と合わせて考える
70歳までの広げ方 70歳までの継続雇用制度として続けられる 70歳までの定年引上げが選べる 定年制の廃止そのものが70歳までの措置になる
60歳以降の雇用の型を比べる図解:再雇用・勤務延長・定年廃止の比較表

どの型が正解ということはなく、人件費の見通し、仕事の性質、若手の育成計画をあわせて考えることがポイントです。

再雇用の条件はどう決める?

継続雇用制度については、かつて「会社が決めた基準を満たす人だけ」を対象にできる経過措置がありました。この経過措置は2025年3月31日で終了しており、現在は、希望する人を原則として対象にする運用が前提です。

ここで悩ましいのが、賃金と役割です。再雇用で嘱託社員などに切り替えるとき、仕事の内容はほとんど変わらないのに賃金だけ大きく下がると、本人の納得感が下がるだけでなく、同一労働同一賃金の観点から待遇差の説明が求められる場面もあります。同一労働同一賃金については、正社員とパートの待遇差の考え方を別の記事でも取り上げています。

正社員と有期・パートの待遇を比べる:違いを説明できるか

実務では、次のような順番で整理すると話が進みます。

  • 本人に任せたい仕事と責任の範囲を先に決める
  • その仕事に見合う賃金の考え方を示す
  • 週の勤務日数や時間の選択肢を用意する
  • 定期的に面談して、役割と待遇を見直す

年金と賃金のバランスも見ておく

60代で働く人は、在職中でも老齢厚生年金を受け取れる場合があります。賃金と年金の合計額が一定の基準を超えると、年金の一部または全部が支給停止になる仕組みが「在職老齢年金」です。この基準額は、2026年4月から月51万円が月62万円へ引き上げられると、厚生労働省の資料で案内されています。基準額は賃金の変動に応じて毎年度改定されるため、最新の金額は日本年金機構で確認してください。

制度が変わると、「年金が減るから働く時間を抑えたい」という本人側の事情も変わり得ます。賃金を決める面談では、会社が年金額を断定するのではなく、本人が自分の年金の見込みを確認したうえで働き方を選べるよう案内するのが安心です。

現場で起きやすい落とし穴

高年齢の人材を活かすうえで、制度以外の部分でつまずく例も少なくありません。

  • 体力や健康面への配慮が個人任せになっている
  • 若手との役割分担があいまいで、指導役なのか実務担当なのかが不明確
  • 労働条件通知書や雇用契約書が、定年前のものを使い回している
  • 契約更新の基準が決まっておらず、毎年なんとなく更新している

有期契約で再雇用する場合は、更新の基準や上限の有無をはっきり書面に残すことが大切です。このあたりの明示ルールは、同じ労務カテゴリの労働条件明示の記事でも整理しています。

労働条件の明示ルールが変わった:通知書で見直す項目

また、高年齢者雇用状況の報告など、毎年の定例手続きもあります。従業員が一定規模以上の会社には、高年齢者雇用状況等報告の提出が求められます。報告の内容は、自社の制度を点検する材料にもなります。

人材確保や組織づくりの考え方は、経営の視点からも整理しておくと役立ちます。

制度づくりの進め方

最後に、会社が実際に動くときの流れをまとめます。

  1. 現状を確認する。定年年齢、再雇用の有無、就業規則の定めを見直す
  2. 本人の希望を聞く。働く日数、時間、役割、健康面の不安など
  3. 制度の方向を決める。定年引上げか、再雇用の改善か、業務委託の併用か
  4. 就業規則と契約書を整える。賃金、更新の基準、退職の扱いを書面にする
  5. 運用しながら見直す。面談の記録を残し、毎年振り返る

特に大切なのは、就業規則に書くことと、本人に伝えることの両方をやることです。ルールがあっても伝わっていなければ、現場では「聞いていない」というズレが起きます。3つの型のどれが自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

制度の説明は、定年の数か月前に一度だけ行うのではなく、50代のうちから「この先どう働きたいか」を話せる場をつくっておくと、本人も会社も準備ができます。ベテラン本人が「会社に必要とされている」と感じられるかどうかが、再雇用後の意欲を左右します。

まとめ

65歳までの雇用確保は義務、70歳までの就業確保は努力義務です。再雇用、勤務延長(定年引上げ)、定年廃止のどの型を選ぶにしても、ベテランの経験を活かすには、仕事の範囲、賃金の考え方、勤務時間の選択肢を、本人と対話しながら決めていくことが近道です。就業規則と契約書の整備、年金制度の変化への目配りも、早めに進めておくと安心です。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。

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