最低賃金の改定に合わせて、賃金テーブルを見直す手順

最低賃金の改定に合わせた賃金テーブルの見直し手順を解説する記事のアイキャッチ画像

目次

  1. 令和8年度の改定をざっと確認
  2. 手順1:金額を正しくつくり、時間額にそろえる
  3. 手順2:下回る人を洗い出す
  4. 手順3:テーブル全体のバランスを整える
  5. 手順4:書類を更新して、本人に伝える
  6. 負担増の備えと、使える支援
  7. まとめ

最低賃金の改定のニュースが流れるたびに、「うちは時給が足りているから大丈夫」と考えて、そのままにしていませんか。実は、最低賃金のチェックは時給のパートさんだけの話ではありません。月給の正社員でも、手当の組み合わせ次第では、時間あたりに直すと基準を下回っていることがあります。さらに、一番下の賃金を引き上げると、その上の層との差が縮まり、社内の賃金のバランスが崩れがちです。この記事では、改定のたびに慌てないための、賃金テーブルの見直し手順を順番に整理します。

令和8年度の改定をざっと確認

令和8年度の地域別最低賃金は、全都道府県の答申がまとまり、全国加重平均で時給1,177円となりました。前年度の1,121円から56円の引き上げです。引き上げ額は都道府県によって異なり、54円から65円の幅があります。最も高い地域は1,280円、最も低い地域は1,085円と報じられています。

発効日は都道府県ごとに異なり、2026年10月から12月にかけて順次となる見込みです。自社の事業場がある都道府県の発効日は、必ず労働局や都道府県の公表で確認してください。なお、業種ごとに定められる「特定(産業別)最低賃金」が適用される事業場では、地域別と特定の高いほうを下回ってはいけません。

手順1:金額を正しくつくり、時間額にそろえる

最低賃金と比べる賃金には、含めてよいものと、含めてはいけないものがあります。厚生労働省の案内では、次のものは最低賃金の計算に入れません。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

つまり、基本給に加えて役職手当や職務手当が出ていても、通勤手当や家族手当は計算から外します。固定残業代を支給している会社は、その分は最低賃金の判定に使えない点に特に注意が必要です。

次に、比較できる形に直します。月給制の場合は、月給(算入できる分)を1か月の平均所定労働時間で割って、時間あたりの金額を出します。日給制なら、日給を1日の平均所定労働時間で割ります。基本給と手当など、複数の種類があるときは、それぞれを時間額に直して合計し、最低賃金と比較します。

計算の際に見落としやすいのが、平均所定労働時間の出し方です。年間の所定労働日数に1日の所定労働時間をかけて、12か月で割る方法が一般的です。休日が多い会社ほど、月の所定労働時間が短くなり、時間あたりの金額は高く出ます。逆に、所定労働時間を増やす改定をすると、時間額が下がってしまう点にも気をつけましょう。

手順2:下回る人を洗い出す

計算の結果、最低賃金を下回る人が出たら、まず該当者を一覧にします。最低賃金より低い額で労使が合意していても、その合意は無効で、最低賃金と同額の定めをしたものとして扱われます。つまり、気づかずにいるうちに、差額の未払いが積み上がっていく可能性があります。

洗い出しでは、次の働き手も忘れずに確認してください。

  • 試用期間中の人(試用期間でも原則として最低賃金が適用されます)
  • 時給のアルバイト、パート、月の途中で入社した人
  • 複数の手当で構成されている月給の若手社員

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見直しの作業を専門家に頼む場合は、報酬の仕組みを知っておくと依頼しやすくなります。

手順3:テーブル全体のバランスを整える

最低賃金を下回る層の賃金を引き上げると、次に起こりやすいのが「逆転・圧縮」です。入社したばかりの人と、数年働いた人の賃金差が小さくなり、経験者の不満につながります。これを防ぐには、一番下を上げるだけでなく、その上の層も同じ幅で調整することを検討します。

見直しの視点を整理します。

  • 等級や経験年数ごとの賃金の差が、制度の考え方に合っているか
  • 初任給と、1〜3年目の昇給の幅が、現実の採用市場から見て妥当か
  • 固定残業代の設定が、最低賃金の引き上げ後も適正な時間数に収まっているか
  • 求人票で公表する賃金が、最新の最低賃金を満たしているか

たとえば、時給の新人が最低賃金の改定で一気に上がり、数年勤めた先輩との差が数十円しかなくなった、という状況は珍しくありません。差が小さくなった理由を先輩に説明できないと、納得感が失われます。昇給の仕組みを見直すか、経験に応じた手当を整えるかなど、会社の考え方を決めておきましょう。

一度に全部を直そうとせず、まず「下回る人への対応」を最優先にし、次に「テーブル全体の調整」を段階的に進めるのが現実的です。

手順4:書類を更新して、本人に伝える

賃金を変更したら、雇用契約書や労働条件通知書の賃金欄を更新します。賃金を引き上げる変更は従業員に有利なので手続きは比較的単純ですが、賃金の構成を組み替える場合(手当を基本給に組み入れるなど)は、不利益になる人が出ないかを丁寧に確認してください。給与計算のシステムの単価、求人サイトの掲載内容、就業規則の賃金規程も、あわせて更新します。

変更の通知は、書面かメールなど記録に残る形で行うのが基本です。個別の通知が難しいときは、全員への掲示や説明会に加えて、希望者に個別の確認ができる窓口を設けておくと安心です。従業員には、「最低賃金が上がったため、この日から賃金が変わる」とはっきり伝えましょう。会社の誠実な姿勢は、定着率にもつながります。

負担増の備えと、使える支援

賃金の引き上げは、社会保険料や割増賃金にも波及します。基本給が上がれば、時間外労働の割増賃金の単価も上がり、会社が負担する社会保険料も増えます。価格への転嫁や業務の効率化も含めて、年間の人件費の見通しを立てておきましょう。

国には、賃金の引き上げに取り組む中小企業を支援する助成金もあります。たとえば「業務改善助成金」のように、事業場内の最低賃金を引き上げ、設備投資などを行った場合に費用の一部が助成される制度があります。対象の条件や上限額は年度ごとに変わるため、使えるかどうかは最新の案内で確認してください。

まとめ

最低賃金の見直しは、手順を決めておけば毎年の定例作業にできます。令和8年度は全国加重平均で1,177円と、前年度から56円上がりました。自社の事業場の発効日を確認し、算入しない手当を除いて時間あたりの賃金に直し、下回る人を洗い出し、テーブル全体のバランスを整え、書類とシステムを更新する。この順番で進めれば、抜け漏れを防げます。毎年同じ手順で点検する習慣が、いちばんの備えです。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。

賃金テーブル見直しの4手順を示す図解:時間額にそろえる・下回る人を洗い出す・全体を調整・書類を更新
令和8年度の最低賃金を示す図解:全国加重平均1,177円と引き上げ幅

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