目次
- 3つの取らせ方、比べる視点
- 比較表で見る有給休暇の取らせ方
- 義務の中身は「年5日を確実に」
- 対象者の見つけ方
- 時季指定のやり方
- 就業規則と管理簿を整える
- 無理なく回す年間のスケジュール
- 違反したらどうなるか
- まとめ
- 合わせて読みたい
「有給は、取りたい人が自分で申請するもの」。そう考えて、従業員任せにしている会社はありませんか。2019年から、年次有給休暇のうち年5日は、会社が責任をもって取得させる義務になりました。取得状況を放っておくと、気づかないうちに違反になってしまいます。制度の中身は難しくありませんが、「誰が対象か」「いつまでに」「どう記録するか」の3つで、実務が回らなくなる会社が少なくありません。この記事では、有給休暇の3つの取らせ方を比較表で並べ、義務の中身と、現場で無理なく運用するやり方を整理します。
3つの取らせ方、比べる視点
年5日を取得させる方法は、本人が申請する方法、会社が時季を指定する方法、労使協定で日を決める計画年休の3つです。違いは「誰が日を決めるか」と「必要な手続き」です。本人の申請と計画年休で取得した分は5日から差し引かれ、残った分だけ会社が時季指定します。3つを組み合わせることが、無理のない運用の前提になります。
比較表で見る有給休暇の取らせ方
まずは全体像を表で比べます。
| 比較項目 | 本人の申請(従業員が時季を指定) | 会社の時季指定(年5日義務) | 計画的付与(計画年休) |
|---|---|---|---|
| 日を決める人 | 労働者本人 | 会社(本人の意見を聞いたうえで) | 労使協定にもとづき、あらかじめ決める |
| 仕組み | 本人が自分で申請して取得する | 取得が進まない分について、会社が日を指定して取得させる | 会社と労働者代表の協定にもとづき、あらかじめ日を決めて取得する |
| 年5日への数え方 | 取得した日数は、5日から差し引かれる | 本人の申請などで取得済みの日数を差し引いた、残りの日数を指定する | 取得した日数は、5日から差し引かれる |
| 手続き・決まり | 本人の申請が起点になる | 意見を聞くことが必須。就業規則への記載が必要 | 労使協定が必要。決められるのは、各人の有給休暇のうち5日を超える部分に限られる |
| 向いている場面 | 自分で休みの計画を立てられる場合 | 基準日からの期限までに、取得が進んでいない場合 | 夏季や年末年始など、全員で休む日を設けたい場合 |

義務の中身は「年5日を確実に」
厚生労働省の案内では、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者が対象です。会社は、その労働者に対して、付与した日(基準日)から1年以内に、5日分の有給休暇を確実に取得させなければなりません。対象には、管理監督者(いわゆる管理職)も含まれます。
取得させる方法は3つあります。
- 労働者本人が自分で申請して取得する
- 計画年休:会社と労働者代表の協定にもとづき、あらかじめ日を決めて取得する
- 会社が日を指定して取得させる(時季指定)
最初の2つで取得した日数は、5日から差し引かれます。たとえば、本人が3日取得済みなら、会社が時季指定する必要があるのは残りの2日です。5日以上を自分で取っている人には、会社が日を指定する必要はありません。
対象者の見つけ方
「10日以上付与される人」は、正社員だけではありません。入社から6か月たち、全労働日の8割以上出勤していれば、通常は10日の有給休暇が付与されます。パートタイムでも、週の所定労働日数が少ない人は付与日数が少なくなりますが、勤続年数が進めば10日以上になる人が出てきます。
見落としやすいのが、パート・アルバイトの中に、いつの間にか対象になっている人がいるケースです。付与日数が10日を超えたタイミングは、本人の入社日から数えて決まります。従業員ごとの入社日と付与日数を一覧にして、毎年点検しましょう。
たとえば、従業員5人ほどの小さな会社で、全員が10日以上の付与対象だとします。それぞれの基準日が違えば、年間を通して5人分の取得状況を別々に追いかけることになります。放っておくと、「誰がいつまでに何日取るべきか」が見えなくなり、期限直前に慌てる原因になります。
また、入社日がバラバラの会社では、基準日も人によって違います。基準日を月初などにそろえる運用にすると、管理が楽になります。ただし、前倒しで付与する場合は、法律上の付与日数を下回らないよう注意が必要です。
時季指定のやり方
会社が日を指定するときの手順は、次のとおりです。
- 基準日からの経過期間と、取得済みの日数を確認する
- 対象者に、取得時季についての意見を聞く
- 聞いた意見を尊重するよう努めたうえで、日を決めて通知する
意見を聞くことは必須の手続きです。「この日に休んでください」と一方的に決めるのは望ましくありません。厚労省の案内でも、時季指定の前に労働者の意見を聞くことが求められています。
なお、半日単位の取得は、0.5日として5日に数えられます。一方、時間単位の取得は、5日には数えられません。この違いも、よく間違えられる点です。
税理士・弁護士・社労士・司法書士・行政書士・弁理士を比べる:6つの士業に頼める仕事の違い
規則の整備や記録の方法に不安があるときは、社会保険労務士に相談するのが安心です。どの士業に何を頼めるかの全体像は、早わかりマップを参考にしてください。
就業規則と管理簿を整える
会社が時季指定を行うなら、その方法を就業規則に書いておく必要があります。時季指定の対象になる労働者の範囲や、指定の方法などを規則に明記します。規則に書かれていなければ、会社が指定する運用に根拠がなくなるため、先に整えておきましょう。
もう一つの義務が、年次有給休暇管理簿の作成です。労働者ごとに、取得した日(時季)、日数、基準日を記録します。保存期間は3年間です。専用の帳簿でなくても、賃金台帳や勤怠システムのデータで、必要な項目がわかれば足ります。
無理なく回す年間のスケジュール
義務を守るコツは、「基準日から半年」など、中間地点で確認する仕組みをつくることです。目安として、次の流れで運用すると、年度末に慌てずに済みます。
- 基準日:付与日数を通知し、「年5日は必ず取ってください」と伝える
- 基準日から半年:取得が5日未満の人を、一覧で確認する
- その後:未取得の人に、取得の意見を聞き、時季指定を行う
- 毎月:管理簿を更新し、取得状況を上司にも共有する
職場の雰囲気づくりも重要です。上司が先に休む、繁忙期を避けた計画を一緒に立てる、お盆や年末年始に計画年休を組み込むなど、休みやすい環境が、結果として義務の達成につながります。人手が少ない現場では、交代で取る仕組みや、業務の引き継ぎ表を整えると、気兼ねなく休めます。
計画年休も有効な選択肢です。夏季や年末年始、連休の谷間などに全員が休む日を設ければ、個別の時季指定の手間が減り、「みんなが休むから休みやすい」という空気もつくれます。ただし、計画年休で決められるのは、各人の有給休暇のうち5日を超える部分に限られる点には注意してください。どの取らせ方を組み合わせるか、自社の運用に迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。
違反したらどうなるか
決まりを知らなかった、忙しくて見ていなかった、という事情があっても、義務の違反になる点は変わりません。年5日の取得義務に違反すると、罰則の対象になりえます。30万円以下の罰金とされています。労働者1人につき1つの違反として扱われるため、従業員が多いほど影響が大きくなります。ただ、罰則を避けることだけが目的ではありません。取得状況は、労働基準監督署の調査でも確認される項目の一つです。休暇の取得は、従業員の心身の健康と、採用や定着の面でも会社の力になります。
まとめ
有給5日の取得義務は、10日以上付与される労働者が対象で、基準日から1年以内に5日を取得させる必要があります。本人の申請、計画年休、時季指定の3つの方法を組み合わせ、時季指定の前には必ず意見を聞きます。就業規則への記載と、年次有給休暇管理簿の作成・3年間の保存も忘れずに。基準日から半年の時点で確認する仕組みを持てば、年度末に慌てる心配は減ります。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。
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