法定後見と任意後見を比べる:備える時期と後見人の決まり方

法定後見と任意後見を比べる:備える時期と後見人の決まり方

目次

  1. 判断力が落ちると、何が困るのか
  2. 2つの制度を比べる
  3. 法定後見:判断力が落ちたあとに使う
  4. 任意後見:元気なうちに「任せる人」を決める
  5. よくある勘違い
  6. 元気なうちにできる3つの備え
  7. 司法書士に相談する場面
  8. まとめ

実家の母が、最近同じことを何度も聞く。通帳の置き場所を忘れた。そんな変化に気づいたとき、頭をよぎるのが「もし判断力が落ちて、契約や手続きができなくなったら」という不安ではないでしょうか。そのときの備えとして知られているのが成年後見制度です。ただ、ひとくちに成年後見といっても、すでに判断力が落ちてから使う「法定後見」と、元気なうちに備える「任意後見」では、使い方がまったく違います。この記事では、2つの制度を表で比べて違いを押さえたうえで、今のうちにできる備えを整理します。

判断力が落ちると、何が困るのか

本人の判断能力が不十分になると、法律上、契約などを一人で有効に行うことが難しくなります。具体的には、次のような場面で支障が出ます。

  • 預貯金の解約や、大きな引き出しを銀行で断られる
  • 不動産の売却、賃貸契約の更新などが進められない
  • 介護施設への入所契約や、介護サービスの契約が結べない
  • 悪質な勧誘から、本人を守りにくくなる

「家族なのだから、代わりにやればいい」と思いがちですが、金融機関や不動産の手続きでは、本人以外が代わりに行うには、法的な根拠が必要です。その根拠をつくるのが、成年後見制度です。

2つの制度を比べる

違いを表にまとめると、次のようになります。

比較項目 法定後見 任意後見
備える時期 判断力が落ちたあとに申し立てる 判断力がしっかりしているうちに契約し、効力は判断力が落ちてから始まる
後見人の決まり方 家庭裁判所が選ぶ(申立ての際に希望は伝えられるが、希望どおりとは限らない) 本人が、任せたい人を自分で選ぶ
家庭裁判所の監督 後見人等の財産管理に家庭裁判所の目が入る 家庭裁判所が選んだ任意後見監督人が、職務を見守る
手続きの入口 家庭裁判所への申立て 公正証書による任意後見契約
向いている場面 すでに判断力が落ちている場合 任せる人を自分で決めておきたい場合
法定後見と任意後見の比較:備える時期と決め方で比べる

「自分の老後は自分で決めておきたい」という方には、任意後見が向いています。反対に、すでに判断力が落ちている場合は、任意後見は使えず、法定後見が現実的な選択肢になります。

なお、成年後見制度は見直しの議論が進められているとされ、今後の運用が変わる可能性があります。最新の状況は、法務省や家庭裁判所の案内で確認してください。

法定後見:判断力が落ちたあとに使う

法定後見は、すでに判断能力が十分でなくなった人のために、家庭裁判所が後見人等を選ぶ制度です。本人の状態に応じて、3つの類型があります。

  • 後見:判断能力がほとんどない場合
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な場合
  • 補助:判断能力が不十分な場合

後見人等になるのは、家族のほか、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が選ばれることもあります。誰を選ぶかは、家庭裁判所が事情を見て決めます。申立ての際に希望を伝えることはできますが、希望どおりになるとは限りません。

また、法定後見は始めると、財産の管理に家庭裁判所の目が入り、家族が自由に財産を動かすことは難しくなります。資産運用や、生前贈与のような相続対策が制限される場合もあります。

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任意後見:元気なうちに「任せる人」を決める

任意後見は、判断能力がしっかりしているうちに、将来任せたい人(任意後見受任者)と、任せたい内容を、契約で決めておく制度です。法務省の案内では、任意後見契約は公正証書で結ぶ必要があり、公証人が本人の真意を確認します。

実際に判断能力が落ちたとき、受任者などが家庭裁判所に申し立てて、任意後見監督人が選ばれます。そこから任意後見が始まり、後見人が契約どおりに職務を行っているかを、監督人が見守ります。監督人が選ばれるまでは、受任者は契約で任された事務を行えない点に注意が必要です。

法定後見との大きな違いは、「誰に、何を任せるか」を自分で決められることです。信頼できる家族や専門家を、自分の意思で選べます。

よくある勘違い

成年後見について、次のような思い込みをよく耳にします。

  • 「家族が後見人になれば自由に使える」:後見人になっても、本人の財産は本人のものです。本人のために使う義務があり、家族のために使うことはできません。
  • 「一度始めても、問題が解決したらやめられる」:法定後見は、原則として本人の状態が回復しない限り続くと考えられています。やめどきを自分で決めにくい点は、始める前に知っておきたいところです。
  • 「任意後見の契約を結べば、すぐ見守ってもらえる」:任意後見は、判断力が落ちて監督人が選ばれてから始まります。契約を結んでから効力が生じるまでの間は、別の備えが必要になります。

この「契約から効力発生までの空白期間」を埋めるために、定期的に様子を見てもらう見守り契約や、財産管理を前もって任せる契約を、任意後見とあわせて結ぶ例があります。ただし、契約の内容は人によって異なるため、専門家と一緒に設計するのが安心です。

元気なうちにできる3つの備え

備えは、任意後見だけではありません。生活や財産の状況に応じて、次の組み合わせを検討します。

  • 任意後見契約:判断力が落ちたときの、財産管理や身の回りの手続きを任せる。
  • 遺言:亡くなったあとの財産の行き先を決める。
  • 家族信託:不動産などの管理を、前もって家族に託す。

それぞれ守備範囲が違い、単独では足りない部分が出ます。たとえば、任意後見は亡くなった時点で終わるため、死後の財産の行き先は遺言で決めておく必要があります。全体像を一度整理しておくと、抜けが減ります。

司法書士に相談する場面

司法書士は、成年後見の分野で次のような役割を担えます。

  • 任意後見契約書の案の作成や、公正証書にするための準備
  • 法定後見の申立書類の作成
  • 条件が合えば、後見人等として本人を支える

家族の間で意見が割れている場合や、財産の扱いで争いになっている場合は、弁護士の領域になります。まずは誰が、何に困っているかを整理して相談するのが近道です。親の備えをどこから始めるか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

まとめ

成年後見には、判断力が落ちてから家庭裁判所が関わる「法定後見」と、元気なうちに契約で備える「任意後見」があります。自分で任せる人を決めたいなら、任意後見は有力な選択肢です。ただし、任意後見は元気なうちにしか契約できません。気になり始めたときが、動き出すときです。まずは親子で、将来どうしたいかを話す機会をつくってみてください。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。

任意後見が始まるまで:契約から効力発生までの流れ

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