目次
- 本店移転は「登記」が必要です
- まず確認:管轄内か管轄外か
- 決めること:定款と社内の決議
- 費用と必要書類
- 移転後に忘れがちな届出
- 段取りの目安スケジュール
- まとめ
「オフィスを移すことにしたけれど、会社の住所って役所でどう変えるの?」。移転が決まると、荷造りや内装の手配に追われて、登記のことは後回しになりがちです。ところが、会社の本店の住所は登記簿に載っている情報なので、引っ越しをしたら法務局で手続きをしなければなりません。この記事では、本店移転登記の流れ、管轄が変わるかどうかで何が違うのか、用意する書類、移転後にほかで必要な手続きまでを、順番に整理します。
本店移転は「登記」が必要です
会社の本店所在地は、登記簿(登記事項証明書)に載る基本情報の一つです。住所が変わったのに登記を放置すると、取引先や金融機関が確認する会社の情報と実態がずれてしまいます。
期限もあります。会社法では、本店を移転したら2週間以内に変更登記をすることが求められています(会社法915条・916条)。この期限を過ぎると、過料(行政上のペナルティ)の対象になる可能性があります。「移転日」から数えるので、荷物を運ぶ日と登記の準備を並行して進めるのがおすすめです。
あわせて、新しい物件の賃貸借契約も見直してください。賃貸オフィスの契約では、その住所を法人の本店として登記してよいかが定められていることがあります。契約で法人登記が認められていないと、登記はできても、あとで貸主とトラブルになるおそれがあります。契約前の段階で、不動産会社や貸主に確認しておくと安心です。
まず確認:管轄内か管轄外か
登記を受け付ける法務局は、住所ごとに担当エリア(管轄)が決まっています。ここが手続きの分かれ道です。
- 管轄内の移転:移転前と移転後が同じ法務局の管轄。申請は1か所で済みます。
- 管轄外の移転:移転後が別の法務局の管轄。旧所在地の法務局を経由して、新所在地の法務局へ申請する形になります(商業登記法51条)。
注意したいのは、市区町村の区切りと法務局の管轄が一致しないことがある点です。同じ市内でも担当の法務局が違う場合があるので、新しい住所の管轄は、法務局のウェブサイトで調べてから動きましょう。
なお、管轄外へ移転すると、新所在地の法務局には、会社の新しい登記記録が作られます。そこには、会社の成立の年月日や、本店を移転した旨とその日付も記録されます(商業登記法53条)。社名や役員が変わるわけではなく、記録を置く場所が移る、とイメージすると分かりやすいでしょう。
決めること:定款と社内の決議
次に、社内で何を決めるかです。ポイントは、会社のルールブックである定款に、本店の所在地がどこまで書いてあるかです。
- 定款に「東京都渋谷区」のように市区町村までしか書いていない場合、同じ市区町村の中で移るだけなら、定款を変えずに済みます。この場合は、取締役の過半数の決定(取締役会がある会社は取締役会の決議)で、新しい住所と移転日を決めます。
- 市区町村をまたぐ移転では、定款の記載を変える必要が出てきます。定款の変更には株主総会の特別決議が必要です(会社法466条)。特別決議は、一定数以上の株主が出席し、その3分の2以上の賛成を得て成立する、重めの決議です。
定款の書き方は会社ごとに違うため、まず手元の定款を見て、本店の所在地の条文を確認してください。株主が少ない会社でも、議事録を残すことが大切です。
決議の順番にも注意が必要です。実際の移転日の前に、新しい住所と移転日を決めておくのが一般的です。移転後に慌てて決議を作ると、日付の前後関係が不自然になり、法務局から補正(書類の直し)を求められる原因になります。取締役が1人の会社なら、その取締役が決定し、決定書を作ります。
費用と必要書類
登録免許税(登記のときに国へ納める税金)は、本店の移転で1か所につき3万円と決められています(登録免許税法・別表第一)。管轄外の移転では、旧所在地と新所在地の両方で課税され、合計6万円になるのが一般的です。
用意する書類のおおまかな一覧です。
- 登記申請書
- 本店移転の決定を示す書類(取締役の決定書、または取締役会議事録)
- 定款を変更する場合は、株主総会議事録と株主リスト
- 司法書士などに頼む場合は委任状
管轄外の場合は、旧所在地用と新所在地用の申請書をそれぞれ作成します。必要な書類は会社の形態(取締役会の有無など)で変わるので、自社の場合の一覧は、事前に確認しておくと安心です。
移転後に忘れがちな届出
登記が終われば完了、ではありません。会社の住所を知らせている先は、思った以上に多くあります。
- 税務署、都道府県税事務所、市区町村への異動届出
- 年金事務所、ハローワーク、労働基準監督署など、従業員関係の窓口
- 銀行や取引先、リース・保険の契約先
- 許認可を受けている事業の変更届(所管の役所へ)
- 名刺、請求書、ホームページ、名義入りの印鑑や看板
許認可が絡む業種では、移転前後で届出の期限や、事務所の要件が決まっていることがあります。移転先を決める前に、確認しておくのが安全です。
日常の連絡では、郵便物の転送の手続きもしておくと、旧住所に届く郵便の取りこぼしを防げます。取引先や顧客への案内は、登記が終わってから送るのではなく、移転日が決まった時点で先に知らせるほうが、請求書や契約書の宛先の食い違いを防げます。
合わせて読みたい:会社を作ったあとに:業種別の許認可チェックリスト
会社の拠点づくりや、経営の基本については、令和の総合商社でも取り上げています。
段取りの目安スケジュール
実際の進め方を、時系列で並べてみます。
- 移転先が決まったら、定款の本店の記載と、新しい住所の管轄を確認する
- 移転日と新住所を決め、必要なら株主総会を開く
- 移転日を過ぎたら、2週間以内に登記を申請する
- 登記が完了したら、登記事項証明書を取得し、各所へ届出をする
登記の申請は、窓口への持参、郵送、オンラインのどれでも可能です。ただし、管轄外の移転は書類が増え、ミスも出やすくなります。移転日が近づいたら、早めに司法書士へ相談しておくと、日程の見通しが立てやすくなります。
まとめ
本店移転では、法務局での変更登記が必要で、期限は移転から2週間以内です。まずは、移転先が管轄内か管轄外かを確認し、定款の本店の記載を見て、必要な決議を決めます。登記のあとは、税務署や年金事務所などへの届出も忘れずに進めましょう。移転の手配が多い時期だからこそ、登記と各種届出をチェックリスト化しておくと、抜けを防げます。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。


