相続人が多い・連絡がつかないときの遺産分割の進め方

相続人が多い・連絡がつかないときの遺産分割の進め方

目次

  1. まず「相続人は誰か」を確定する
  2. 連絡がつかない相続人を探す
  3. 話し合い(遺産分割協議)の進め方
  4. 共有名義にして先送りするのは要注意
  5. どうしても連絡がつかない、返事がないとき
  6. 時間が経つほど不利になる理由
  7. 法定相続情報一覧図を使う
  8. 司法書士に頼める範囲
  9. まとめ

遺産分割は、相続人が全員そろって合意しなければ成立しません。相続人が数人なら難しくなくても、10人を超えたり、何十年も会っていない親族が含まれたり、そもそも連絡先が分からなかったりすると、話はとたんに止まります。「一人でも反対すれば進まない」という原則があるからです。この記事では、相続人が多い、あるいは連絡がつかない場面での進め方と、司法書士が関われる範囲を、手順に沿って整理します。

まず「相続人は誰か」を確定する

話し合いの前提として、相続人が誰なのかを正確に把握する必要があります。思い込みで進めると、あとから別の相続人が見つかり、せっかくの話し合いがやり直しになることがあります。

確定には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集めます。転籍や改製で戸籍が何通にも分かれていることが多く、集めるだけでも手間がかかります。

そのうえで、相続人が亡くなっている場合は、その子ども(代襲相続人)や、さらに下の世代が関わってきます。きょうだいが相続人になるケースでは、思いのほか人数が増えることがあります。

戸籍の収集と相続関係の整理は、司法書士が日常的に扱う分野です。集めた結果は、後述の法定相続情報一覧図にまとめると、その後の手続きが楽になります。

連絡がつかない相続人を探す

相続人が決まったら、全員に連絡を取ります。住所が分からない場合は、次の順番で手がかりを探すのが一般的です。

  • 戸籍をたどり、戸籍の附票(住所の履歴が分かる書類)を取って、現住所を確認する
  • 判明した住所に、まず手紙で事情を説明する
  • 返事がない場合は、再度、丁寧な文面で送る

いきなり電話や訪問をするより、手紙で経緯と相談したい内容を落ち着いて伝えるほうが、相手も受け取りやすくなります。

こうした調査は、相続人の関係者でもできますが、戸籍や附票は取得できる人の範囲に制限があります。司法書士なら、職務上の請求として、戸籍関係の書類を集める手伝いができる場合があります。

合わせて読みたい:交渉・調停・訴訟を比べる:トラブル解決の進め方と期間の目安

話し合い(遺産分割協議)の進め方

連絡がついたら、全員で遺産の分け方を話し合います。進め方のポイントは次のとおりです。

  • 財産を一覧にして共有する:不動産、預貯金、株式、借入金などを一覧にし、全員が同じ情報を持つ。
  • 選択肢を示す:現物で分ける、売却して現金で分ける、一人が引き継いで他の人に代償金を払う、といった案を並べる。
  • 集まれない場合は書面・オンラインで:遠方の人とは、メールや郵送、ウェブ会議で意見を集める。

合意できたら、遺産分割協議書を作り、相続人全員が署名し、実印で押印し、印鑑証明書を添えます。この書類が、不動産の名義変更や金融機関の手続きの土台になります。司法書士は、この協議書の作成や、登記の申請を担えます。

共有名義にして先送りするのは要注意

相続人が多いと、「とりあえず全員の共有名義にしておこう」と考えたくなります。法定相続分どおりに共有で登記すれば、話し合いをせずに済むため、手続きとしては進めやすいのは事実です。

ただ、共有にした不動産は、売却や建て替えのたびに共有者全員の同意が必要になります。しかも、共有者がさらに亡くなれば、その相続人へと権利が分かれ、共有者が増えていきます。問題を解決したのではなく、次の世代に先送りしただけになりかねません。

可能であれば、一人が引き継いで他の相続人に代償金を支払う方法や、不動産を売却して現金で分ける方法を検討してみてください。

どうしても連絡がつかない、返事がないとき

手を尽くしても、行方が分からない相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるという方法があります。選ばれた管理人が、行方不明の人に代わって遺産分割の話し合いに加わります。

また、相続人が話し合いに応じない、意見が対立する場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を使い、調停委員を交えて話し合います。調停でまとまらなければ、審判で裁判所が分け方を決めます。

これらの手続きは、書類の作成を司法書士が支援できる場合があります。ただし、当事者間の交渉や、調停・審判の場で本人の代わりに主張を行うのは、弁護士の領域です。争いが表面化した時点で、弁護士に相談することが大切です。

時間が経つほど不利になる理由

遺産分割には、時間との関係で注意点がいくつかあります。

  • 相続人が増える:放置している間に相続人の誰かが亡くなると、その人の相続人が加わり、話し合いの相手が増えます。
  • 相続登記の期限:相続登記は2024年4月から義務化されており、取得を知った日から3年以内という期限があります。話し合いが長引く場合は、相続人申告登記という簡易な方法で期限に備えられます。
  • 10年のルール:2023年4月1日から、相続開始から10年が過ぎると、原則として特別受益や寄与分を考慮した分け方(具体的相続分)を主張できなくなり、法定相続分が基準になります。家庭裁判所に申し立てているなどの例外はあります。

特に10年のルールは、古い相続が残っている家庭ほど影響します。施行前に始まった相続にも、一定の猶予期間を経て適用され、その期限は2028年4月1日とされています。

法定相続情報一覧図を使う

相続人が多い場合、戸籍の束を各手続きの窓口に何度も出すのは大変です。法定相続情報一覧図は、相続関係を一枚の図にまとめ、法務局が認証した写しを、無料で受け取れる制度です。銀行、証券会社、法務局などの手続きで、戸籍の束の代わりに使えます。詳しい使い方は、別の記事で解説します。

司法書士に頼める範囲

相続人が多い場面で、司法書士に頼める主なことは次のとおりです。

  • 戸籍の収集と、相続人の調査
  • 法定相続情報一覧図の作成と申出
  • 遺産分割協議書の作成
  • 不動産の相続登記の申請
  • 家庭裁判所に提出する書類の作成

一方で、相続人同士の交渉や代理は、弁護士の役割です。「揉めていない段階」か「揉めている段階」かが、相談先を決める分かれ目になります。

まとめ

相続人が多い、連絡がつかない場合は、まず戸籍で相続人を確定し、手紙で丁寧に連絡を取るところから始めます。行方不明なら不在者財産管理人、対立するなら調停と、段階に応じた手続きがあります。時間が経つほど相続人が増えるため、早めの着手が肝心です。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。

遺産分割の進め方:合意できなければ裁判所へ
司法書士が関われる範囲:争いの有無で相談先が変わる

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