目次
- 2026年7月、何が変わったか
- 自社が対象かを確認する
- 雇用した人はどう数えるか
- 満たせないとどうなるか
- 最初の一歩:5つのステップ
- 長く働いてもらうための工夫
- まとめ
「うちは従業員が40人に届かないから、障害者雇用は関係ない」。2026年7月までは、そう言い切れた会社が多かったかもしれません。しかし、法定雇用率が引き上げられ、雇用義務の対象となる会社の範囲も広がりました。これまで対象外だった小さな会社が、新たに義務を負うケースが出ています。とはいえ、初めての障害者雇用は、何から始めればいいのか見当がつかないものです。この記事では、改正の中身と、対象になるかの確認方法、そして最初の一歩を整理します。
2026年7月、何が変わったか
厚生労働省の案内によると、障害者の法定雇用率は、令和8年(2026年)7月から2.7%に引き上げられました。民間企業の雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ上がっており、今回がその次の段階です。
あわせて、雇用義務の対象となる事業主の範囲も変わりました。2026年7月から、従業員37.5人以上の事業主が対象です。それまでは40人以上でした。この変更により、従業員が37.5人以上40人未満の会社が、新たに雇用義務の対象に加わっています。
自社が対象かを確認する
対象になるかどうかは、従業員の数で決まります。ここでいう従業員の数には、短時間で働くパートやアルバイトも含まれ、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人は、0.5人として数えるのが基本です。たとえば、正社員が30人、週25時間のパートが15人いる会社なら、30人に7.5人を足して37.5人になり、ちょうど対象の目安に届きます。
義務として雇う障害者の人数は、従業員の数に雇用率をかけて、小数点以下を切り捨てて求めます。たとえば、従業員が50人の会社なら、50人に2.7%をかけると1.35人です。切り捨てで、必要な人数は1人になります。37.5人でも、37.5人に2.7%をかけると約1.01人で、1人です。
窓口一本化・個別依頼・紹介でつなぐを比べる:複数の士業への頼み方と連携の違い
制度の確認だけでなく、採用や契約、手続きなど複数の分野にまたがることがあります。そんなときの頼み方は、複数の士業にまたがる悩みの記事が参考になります。
雇用した人はどう数えるか
雇う障害者のカウントにも、決まりがあります。
- 週の所定労働時間が30時間以上:1人
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満:0.5人
- 重度の身体障害者・重度の知的障害者:1人を2人分として数える(短時間の場合は1人分)
- 対象となる手帳:身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれか
また、2024年4月からは、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者も、0.5人として数えられる仕組みが入りました。短い時間から働き始める人も、雇用率の計算に入ります。短時間から始める方法は、本人にも会社にも無理が少ない入り口です。
満たせないとどうなるか
雇用義務の対象になった会社は、毎年6月1日時点の障害者の雇用状況を、ハローワークに報告します。この報告は、通称「ロクイチ報告」と呼ばれます。雇用率を達成していない場合は、ハローワークから雇入れの計画を求められるなど、指導が入ることがあります。
また、従業員が100人を超える会社は、雇用率に届かない分について、障害者雇用納付金の支払いが必要になります。金額や対象の詳細は、厚生労働省や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の最新の案内で確認してください。納付金を払えば雇用義務が果たされたことになる、というわけではない点にも注意が必要です。
最初の一歩:5つのステップ
初めて障害者雇用に取り組む会社は、次の順番で進めると、無理がありません。
- ① 現状を把握する:自社が対象かを計算し、すでに手帳を持つ従業員がいるかを確認する。本人が会社に伝えていない場合もあるため、申告を強制せず、本人の意思とプライバシーを尊重する
- ② 仕事を切り出す:既存の業務の中から、障害のある人に任せやすい仕事を洗い出す。データ入力、書類整理、清掃、梱包、備品管理など、会社ごとに異なる
- ③ 相談先につなぐ:まずはハローワークの専門窓口や、地域の障害者就業・生活支援センターに相談する。採用の進め方や、助成金の情報も得られる
- ④ 受け入れ環境を整える:職場の設備、指示の出し方、相談できる担当者を決める。法律上、会社には本人の状況に応じた合理的配慮を行う義務がある
- ⑤ 短時間や実習から始める:いきなり正式採用でなくても、職場実習や短時間勤務から始め、お互いに慣れる時間をつくる
最初から正社員で、フルタイムで、という形にこだわる必要はありません。本人の体調や得意なことに合わせて、働く時間や仕事の内容を調整できる余地を持っておくと、結果として長続きします。
助成金や、試しに雇ってみる制度(トライアル雇用)も用意されています。ただし、要件は制度ごとに異なるため、最新の案内を確認してください。
小さな会社の場合、最初の1人の受け入れが、その後の取り組みの土台になります。うまくいった経験や、つまずいた点を記録に残して、次の採用や社内の理解づくりに生かしましょう。社内向けには、障害のある人と働くことへの不安を聞く機会を設けると、受け入れる側の気持ちも整います。
長く働いてもらうための工夫
採用はスタート地点で、入社後の数か月が特に大事な時期です。大切なのは、長く安心して働いてもらうことです。次の点を意識してみましょう。
- 仕事の指示は、具体的で、順序がわかるようにする
- 定期的な面談で、本人の困りごとを早めに聞く
- 周囲の従業員に、障害の特性と配慮の内容を、本人の同意のうえで共有する
- 必要に応じて、ジョブコーチなど外部の支援を活用する
配慮は特別扱いではなく、その人が力を発揮するための環境づくりです。うまくいった工夫は、他の従業員にとっても働きやすい職場づくりにつながります。
まとめ
2026年7月から、障害者の法定雇用率は2.7%に引き上げられ、雇用義務の対象は従業員37.5人以上の事業主に広がりました。まず自社の従業員数から対象かどうかを計算し、必要な人数を確認します。そのうえで、現状把握、仕事の切り出し、相談先との連携、環境整備、短時間や実習からのスタートという順番で進めましょう。完璧な体制ができるのを待たず、小さく始めて、育てていく姿勢が大切です。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。


