はじめて従業員を雇う社長のためのチェックリスト

目次

  1. 雇う前に決めておくこと
  2. 労働保険の手続き
  3. 社会保険の手続き
  4. 雇い入れ時に渡す書類
  5. 会社に備える書類と規程
  6. 雇い入れ後に忘れやすいこと
  7. まとめ

「一人でやってきたけれど、仕事が増えて、ついに人を雇うことにした」。うれしい決断ですが、同時に不安も押し寄せます。何の届出が必要なのか、どの書類を渡すのか、保険にはいつ入るのか。分からないまま初日を迎えてしまう経営者は少なくありません。

従業員を雇うと、会社には労働基準法や各種保険のルールが一気に適用されます。この記事では、はじめて従業員を雇う前後に必要な手続きと書類を、時期ごとのチェックリストとして整理します。

雇う前に決めておくこと

採用が決まったら、手続きの前に、まず働く条件を整理します。

  • 仕事の内容と勤務場所:何を、どこでしてもらうか
  • 勤務日と時間:週に何日、1日何時間か。休憩はいつ取るか
  • 賃金:金額、締め日と支払日、残業代の考え方。地域別の最低賃金を下回っていないかは、忘れずに確認してください。
  • 契約期間:期間の定めがあるか。試用期間を設けるか

とくに、週の所定労働時間と雇用期間は、あとで説明する雇用保険や社会保険の加入要件に直結します。「週に20時間以上働くかどうか」といった線引きで、手続きが変わってくるためです。

採用の場面では、本人確認も忘れないでください。マイナンバーの提出を求める場合は、利用目的を伝え、適切に管理します。外国人を雇う場合は、在留カードで就労が認められているかを確認する必要があります。応募書類や個人情報の扱いにも、気を配りましょう。

条件が固まったら、口頭の約束だけで終わらせず、書面にしておくことが、あとのトラブルを防ぎます。

労働保険の手続き

従業員を1人でも雇ったら、原則として労災保険と雇用保険に関する手続きが必要になります。

  • 保険関係成立届(労働基準監督署):従業員を雇った日の翌日から10日以内
  • 概算保険料申告書(労働基準監督署):保険関係が成立した日の翌日から50日以内
  • 雇用保険適用事業所設置届(ハローワーク):設置の翌日から10日以内
  • 雇用保険被保険者資格取得届(ハローワーク):雇い入れた月の翌月10日まで

労災保険は、正社員だけでなくパートやアルバイトも対象で、保険料は全額、会社が負担します。雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上働く見込みがある人が加入の対象です。

会社を作ったあとに:業種別の許認可チェックリスト

社会保険の手続き

健康保険と厚生年金は、会社の形によって加入のルールが違います。

  • 法人(会社)の場合:代表者ひとりだけでも、原則として加入が必要です。従業員を雇えば、その人も加入の対象になります。
  • 個人事業主の場合:常時5人以上の従業員を使う事業所は、業種によって加入が義務になります。それ以外は任意です。

加入が必要な会社は、事実が発生してから5日以内に、年金事務所へ「新規適用届」を出します。従業員が入社したときの資格取得届も、同じく5日以内です。従業員に扶養する家族がいる場合は、被扶養者の届出も必要になります。

パートタイムの従業員も、働き方によっては加入対象になる場合があります。社会保険の適用範囲は近年の見直しが続いているため、最新の基準を確認しましょう。

雇い入れ時に渡す書類

従業員に最初に渡す書類で、もっとも大切なのは労働条件通知書です。法律で、賃金や労働時間などの労働条件を、書面などで明示することが義務づけられています。

  • 契約期間と、更新の有無
  • 働く場所と、仕事の内容
  • 始業・終業の時刻、休憩、休日、残業の有無
  • 賃金の決め方と支払い方法、締め日と支払日
  • 退職に関する事項

近年は、「就業場所や業務の変更の範囲」などの明示事項が追加されています。パートタイム・有期雇用の従業員を雇う場合は、2026年10月から、待遇差の説明を求められることを伝える旨の明示も加わりました。厚生労働省がモデル様式を公表していますので、活用しましょう。

労働条件通知書と別に、雇用契約書も交わしておくと、互いの認識のずれを防げます。

会社に備える書類と規程

雇った後に、会社が備えなければならない書類もあります。

  • 労働者名簿:従業員の氏名、生年月日、住所、雇い入れ年月日などを記載
  • 賃金台帳:賃金の計算の基礎や、支払った額の記録
  • 出勤簿(勤怠記録):労働時間の記録

この3つは「法定三帳簿」と呼ばれ、労働基準監督署の調査でもよく確認されます。また、従業員が常時10人以上になった場合は、就業規則を作って労働基準監督署に届け出る義務があります。

残業や休日労働をさせる可能性があるなら、あらかじめ36協定を結んで届け出ることも必要です。届出がないまま法定の労働時間を超えて働かせるのは、違法になります。

雇い入れ後に忘れやすいこと

雇ったあとも、いくつか対応が続きます。

  • 健康診断:雇い入れ時に健康診断を行う(一定の場合は、直近の診断結果の提出で足ります)。
  • 有給休暇:入社から6か月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤すると、10日の年次有給休暇が与えられます。
  • 給与の支払い:通貨で、全額を、毎月1回以上、一定の期日に、直接本人へ払うのが原則です。
  • 税の手続き:給与の源泉徴収などは、税務署への届出が必要です。税金の分野は税理士に相談しましょう。

助成金を使いたいときは、雇い入れる前に計画の届出が必要なものがあります。採用が決まってから探しても間に合わないことがあるため、早めの確認をおすすめします。

また、試用期間を設ける場合でも、その間の労働条件や、本採用を見送る場合の考え方を、あらかじめ書面に書いておく必要があります。試用期間中だからといって、自由に解雇できるわけではありません。社会保険や雇用保険の加入も、試用期間の有無にかかわらず、要件を満たした時点から始まります。

まとめ

はじめて従業員を雇うときは、「条件の整理」「労働保険」「社会保険」「雇い入れ時の書類」「会社が備える書類」の順番で進めると、抜け漏れが減ります。期限は、5日、10日、50日、翌月10日と、手続きによって違います。雇い入れの日が決まった時点で、カレンダーに期限を書き込んでおくのが安心です。

初めてのことは不安が多いものですが、一度仕組みを作れば、2人目、3人目の採用はずっと楽になります。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は社会保険労務士(社労士)に確認してください。

はじめて従業員を雇う社長のためのチェックリストの図解:雇う前後の手続きと書類
はじめての採用の図解:労働保険・社会保険の手続きの期限

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です