目次
- 勤怠の把握方法、比べる視点
- 比較表で見る勤怠の把握方法
- まず、労働条件に何を書く?
- 勤怠管理のコツ
- 手当と費用負担の考え方
- 情報管理のルール
- 出社組との公平感も忘れずに
- 在宅中のケガは労災になる?
- まとめ
- 合わせて読みたい
在宅勤務が当たり前になって、数年がたちました。出社とテレワークを組み合わせる会社も多いなか、「勤務時間はどう管理しているのか」「自宅の電気代やネット代は誰が持つのか」「情報漏えいは大丈夫か」といった疑問が、いまだに整理されないままの会社も少なくありません。なんとなく始めたルールは、トラブルのもとになります。この記事では、テレワークの勤怠の把握方法を比較表で並べ、手当の扱いとあわせて、テレワークの労務管理を勤怠・手当・情報管理の3つの柱で整理します。就業規則をどう書くかも、あわせて見ていきましょう。
勤怠の把握方法、比べる視点
テレワークの勤怠は、本人の自己申告、パソコンの使用記録(PCログ)、勤怠システムの記録という3つの方法で比べられます。ガイドラインでは、客観的な記録を基本とするとされており、自己申告は客観的な記録と照らして使う方法です。どの方法でも、中抜け時間の扱いと、就業規則への明記が前提になります。手当についても、出社を前提とする通勤手当と、在宅勤務で増える費用への在宅勤務手当では、対象とする費用が違う点を押さえておきましょう。
比較表で見る勤怠の把握方法
まずは全体像を表で比べます。
| 比較項目 | 自己申告 | PCログ(パソコンの使用記録) | 勤怠システム |
|---|---|---|---|
| 把握の仕方 | 本人が始業・終業などを申告する | パソコンの使用記録から労働時間を把握する | システムの入退室・打刻などの記録から労働時間を把握する |
| ガイドライン上の位置づけ | 客観的な記録と照らして使う方法 | 客観的な記録として、基本とされる方法の一つ | 客観的な記録として、基本とされる方法の一つ |
| 確認のポイント | 客観的な記録との食い違いがないか確認し、必要に応じて補正する。申告を妨げる対応はしない | 記録をもとに、実際の労働時間を確認する | 記録をもとに、実際の労働時間を確認する |
| 中抜け時間の扱い | どの方法でも、休憩時間として扱うか、時間単位の年次有給休暇として扱うかを事前に決めておく | どの方法でも、休憩時間として扱うか、時間単位の年次有給休暇として扱うかを事前に決めておく | どの方法でも、休憩時間として扱うか、時間単位の年次有給休暇として扱うかを事前に決めておく |

まず、労働条件に何を書く?
テレワークを実施するとき、まず見直したいのが、労働条件の明示です。厚生労働省のテレワークガイドラインでは、雇い入れの時点でテレワークを行うことが想定される場合には、就業場所として自宅やサテライトオフィスなどを明示することが示されています。会社が許可する場所でのテレワークを含めて定めておく方法もあります。
あとから出社中心の働き方からテレワークへ変えるときや、反対にテレワークをやめて出社に戻すときは、契約や就業規則で定めた範囲を超えるかどうかがポイントです。範囲を超えて命じる場合は、本人の合意が必要になることがあります。
そこで、就業規則には次のようなことを書いておくと安心です。
- テレワークの対象者と、利用できる日数や頻度
- 申請や承認の手続き
- 勤務できる場所
- 勤務時間の考え方と、連絡手段
- 費用負担のルール
- 情報管理のルール
勤怠管理のコツ
テレワークでは、上司の目が届きにくくなるため、勤怠の管理に不安を感じる会社が多くあります。
労働時間の把握は、会社の義務です。ガイドラインでは、パソコンの使用記録や、システムの入退室の記録など、客観的な記録を基本とするとされています。自己申告で行う場合は、客観的な記録との食い違いがないか確認し、必要に応じて補正することが求められます。申告できる時間に上限を設けるなど、申告を妨げる対応はしてはいけません。
特に迷いやすいのが中抜け時間です。育児や介護、通院などで、勤務時間の途中に仕事を離れる場面があります。ガイドラインでは、中抜けを把握する場合に、次のような方法が考えられると示されています。
- 休憩時間として扱い、終業時刻を後ろへずらす
- 時間単位の年次有給休暇として扱う
反対に、中抜けを把握しない運用もありえますが、その場合は、始業から終業までの時間から休憩を除いた時間が労働時間になります。どの方法を取るにしても、就業規則などで事前に決めておくことが大切です。
なお、事業場外みなし労働時間制は、会社の指示で常時通信できる状態に置かれていないことなどの要件があり、テレワークなら誰にでも使えるわけではありません。使いたい場合は、要件を満たすかどうかを慎重に確認してください。どの把握方法と手当の組み合わせが自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。
手当と費用負担の考え方
手当の扱いは、対象とする費用で比べておくと整理しやすくなります。
| 比較項目 | 通勤手当 | 在宅勤務手当 |
|---|---|---|
| 対象とする費用 | 通勤にかかる費用。出社することが前提の手当 | 在宅勤務で増える通信費、電気代など |
| 決め方 | 出社の日数や頻度に応じた扱いを、就業規則などで決めておく | 費用の負担を求める場合は就業規則への定めが必要。負担の区分や上限額、請求の方法を労使で決めて書く |
| 税金の扱い | 制度を設計するときに確認しておく | 実費相当額を精算して支給する場合は給与課税の必要はない一方、実費を精算せず毎月一定額を渡し切りで支給する場合は、給与として課税される |
在宅勤務で増える費用には、通信費、電気代、机や椅子などの備品があります。これを誰が負担するのかが、実務では悩みどころです。
厚生労働省のガイドラインでは、労働者に費用の負担を求める場合は、就業規則に定めることが必要とされています。そのうえで、負担の区分や上限額、請求の方法を労使で決めて、就業規則などに書くことが望ましいと示されています。たとえば通信費や電気代は、業務に使った分の実費を、勤務実態に応じて合理的に計算して支給する、という方法が考えられます。
税金の扱いにも注意が必要です。国税庁のFAQでは、実費相当額を精算して支給する場合は給与課税の必要はない一方、実費を精算せず、毎月一定額を渡し切りで支給する場合は、給与として課税されるとされています。「在宅勤務手当」として一律の額を出す場合は、この点を確認したうえで制度を設計しましょう。
パソコンなどの事務用品は、「支給」ではなく「貸与」とする運用が一般的です。貸与のルールは、紛失や破損の対応とあわせて、書面にしておくと安心です。
情報管理のルール
テレワークでは、会社の外で情報を扱うことになり、漏えいのリスクが高まります。ガイドラインでは、情報セキュリティについて、業務ごとに個別に判断することが望ましく、総務省のテレワークセキュリティガイドラインも活用できるとされています。
実務では、次のような点を決めておくとよいでしょう。
- 使ってよい端末(会社の貸与か、私物の利用を認めるか)
- 通信環境(公共のWi-Fiの利用可否、VPNの利用など)
- 資料の持ち出し、印刷、保管のルール
- 画面の見られ方への配慮(カフェなどでの作業)
- 万一、紛失や漏えいが疑われたときの連絡先
また、近年は生成AIの利用ルールも重要です。在宅勤務中に、手軽に外部のAIサービスへ業務の情報を入力してしまうと、思わぬ漏えいにつながります。AIの社内ルールは、法務の記事で整理しています。
出社組との公平感も忘れずに
テレワークが広がると、出社している人と在宅の人との間で、不公平感が生まれることがあります。たとえば、評価の基準が「見える働きぶり」に偏ったり、在宅の人だけが連絡の抜け漏れに悩んだりします。
対策として、評価は成果や役割にもとづいて行うこと、連絡のルール(チャットの使い方、返信の目安、会議の進め方)を全員で決めることが有効です。出社日を決めている会社では、その日に対面でしかできない相談や打ち合わせをまとめる工夫も役立ちます。ルールは、運用しながら見直す前提で、半年に一度は点検しましょう。
在宅中のケガは労災になる?
在宅勤務中の事故が労災になるかも、よく聞かれます。ガイドラインでは、事業主の支配下にあることで生じたテレワーク中の災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象になるとされています。一方、私的な行為などが原因の場合は対象外です。
会社としては、このことを社員に周知し、ケガをしたときの状況を報告してもらえるようにしておきましょう。また、長時間労働や孤立による健康面の不調も起こりやすいため、定期的な面談や、オンラインでの雑談の機会を設けるのもおすすめです。
テレワークを含めた働き方の工夫は、採用や定着にも影響します。経営の視点も参考にしてください。
まとめ
テレワークの労務管理は、勤怠、費用負担、情報管理の3つが柱です。就業場所の明示、客観的な記録にもとづく労働時間の把握、中抜けの取扱い、費用負担の就業規則への明記、手当の課税関係の確認、そして情報管理のルールが必要です。なんとなく運用している会社は、まず就業規則とルールの文書化から始めてみてください。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。
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