目次
- 就業規則の基本をおさらい
- サイン1:法改正が続いたのに、直していない
- サイン2:実際の運用と書いてあることがズレている
- サイン3:事業の変化とトラブルの増加
- 見直しの進め方と変更の手続き
- 年に1回の「見直しの日」をつくる
- まとめ
会社の棚の奥に、数年前に作ったままの就業規則が眠っていないでしょうか。創業時に社会保険労務士に作ってもらった、あるいは市販のひな形をそのまま使った。それ以来、一度も開いていない。そんな会社は珍しくありません。ところが、働き方も法律もこの数年で大きく変わりました。古い就業規則を放置すると、実態とズレが生じ、いざというときに会社を守れなくなります。この記事では、就業規則を見直すタイミングを見分ける「サイン」と、見直しの進め方を整理します。
就業規則の基本をおさらい
就業規則は、会社と従業員の職場のルールブックです。労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する会社は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。届出には、従業員の過半数でつくる労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見書を添えます。変更した場合も同じ手続きが必要です。
10人未満の会社には作成の義務はありませんが、作っておくメリットは大きいといえます。解雇や懲戒、休職、賃金など、トラブルになりやすい点のルールを、あらかじめ文章にしておけるからです。また、作成しただけでは足りず、従業員がいつでも見られる状態にして周知することも必要です。
サイン1:法改正が続いたのに、直していない
一番わかりやすいサインは、法改正に対応していないことです。ここ数年だけでも、次のような動きがありました。
- 育児・介護休業法の改正(2025年4月と10月に段階的に施行)
- カスタマーハラスメント対策の義務化(2026年10月1日)
- 障害者の法定雇用率の引き上げ(2026年7月)
- 社会保険の適用拡大(2026年10月から段階的に)
すべてが就業規則の変更を伴うわけではありませんが、たとえば育児・介護休業法の改正では、子の看護等休暇の対象の拡大や、柔軟な働き方の措置など、規則に反映すべき内容が含まれます。法律の水準を下回る規定が残っていると、その部分は法律が優先され、規則と運用が食い違います。
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規則の見直しは社会保険労務士の仕事ですが、ほかの士業との役割分担を知っておくと、相談先を迷いません。
サイン2:実際の運用と書いてあることがズレている
次のようなズレがないか、思い当たる点を探してみましょう。
- 規則には「振替休日」とあるが、実際は代休で処理している
- 規則にない手当を、慣習で支給している
- 在宅勤務や副業を実際には認めているのに、規則に書かれていない
- 「試用期間は3か月」とあるが、実際は半年以上ずるずる延ばしている
- 退職金や賞与の規定が、実際の支給実態と違っている
運用が規則と違う状態は、トラブルが起きたときに大きな問題になります。たとえば、懲戒処分をしようとしても、規則に根拠がなければ処分が認められにくくなります。ズレがあれば、規則を実態に合わせるか、実態を規則に合わせるか、どちらかを選びましょう。
サイン3:事業の変化とトラブルの増加
就業規則は、会社の姿に合わせて作るものです。次のような変化があれば、見直しの合図です。
- 従業員数が増えて、10人を超えた、あるいは常時雇用の人数が大きく変わった
- パート、契約社員、派遣など、雇用形態が増えた
- 新しい事業所や、新しい事業を始めた
- テレワークや時差出勤を導入した
- 勤怠管理のシステムや、給与の締め日を変えた
特に雇用形態が増えたときは、正社員の規則だけでは足りません。パートタイム労働者や契約社員の規則を別に定めていないと、労働条件の説明ができなくなります。
もう一つの合図が、従業員からの質問やトラブルの増加です。
従業員からの質問が同じ点に集中しているなら、規則の書き方があいまいなサインです。休暇の取り方、手当の計算、休職の期間など、よく聞かれる点は、書き方を具体的にしておきましょう。また、実際に労務トラブルが起きたときは、規則のどこが足りなかったかを振り返る絶好の機会です。解決した後に、再発しないよう規則を直す習慣をつくってください。たとえば、休職の期間や復職の判断、懲戒の種類と手続きは、トラブルが起きてから「書いていなかった」と気づく典型的な項目です。起きる前に、規則で道筋を示しておきましょう。
見直しの進め方と変更の手続き
見直しの作業は、ひな形を探して書き換えるだけでは終わりません。会社の実態に合わせて「何をルールにするか」を決めるのが本題です。流れは次のとおりです。
- 現状の点検:今の規則と、実際の運用を並べて比べる
- 改正案の作成:法改正への対応と、ズレの解消を盛り込む
- 従業員代表の意見聴取:過半数代表者などの意見を聞き、意見書をもらう
- 労働基準監督署への届出:常時10人以上の会社は必須
- 従業員への周知:改正後の規則を、全員が見られる状態にする
注意したいのは、従業員に不利益になる変更です。賃金や休暇を減らすような変更は、原則として従業員の同意が必要で、一方的に変えると無効になることがあります。労働契約法にも、合理性が求められる旨の規定があります。不利益変更になりそうな場合は、事前に専門家に相談してください。説明会を開いて理由を丁寧に伝え、必要に応じて経過措置(一定期間は従来の扱いを続ける)を設けると、受け入れられやすくなります。
年に1回の「見直しの日」をつくる
法改正は毎年のように続きます。そこで、年に1回、見直しの日を決めておくと、慌てずに済みます。おすすめは、年度の切り替え時期や、法改正が多い4月・10月の前です。この日に、法改正の一覧、1年間のトラブル、運用のズレを持ち寄って、規則に反映すべき点を確認します。小さな修正を毎年重ねるほうが、数年ごとの大改訂より負担が軽く、抜けも出にくくなります。
まとめ
就業規則を見直すサインは、法改正に対応していない、運用と規則がズレている、事業や組織が変わった、同じ質問やトラブルが増えた、の4つです。サインに気づいたら、現状の点検から、案の作成、意見聴取、届出、周知の順で進めます。不利益になる変更は特に慎重に扱い、年に1回の見直しの日を決めておくと、抜け漏れを防げます。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。



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