目次
- フルタイムと短時間労働者、比べる視点
- 比較表で見る加入対象の違い
- 今の加入条件をおさらい
- 2026年10月に賃金要件がなくなる
- 2027年から会社の規模の条件が下がる
- 会社の負担はどう変わるか
- 今のうちに進める準備
- 手続きと社内ルールの更新
- まとめ
- 合わせて読みたい
「うちはパートさんが多いけれど、社会保険に入れなくてもいいはず」。そう思っていた会社ほど、これからの数年間で状況が大きく変わります。パート・アルバイトの社会保険(健康保険と厚生年金)の加入ルールは、2026年10月から段階的に広がっていく流れにあります。対象が増えるとなれば、保険料の負担、シフトの組み方、本人への説明と、考えることは一気に増えます。この記事では、フルタイムの働き手と短時間労働者の加入要件を比較表で並べ、拡大のスケジュールと、会社が今のうちに進めておきたい準備を整理します。
フルタイムと短時間労働者、比べる視点
フルタイムで働く人は、通常の労働者として社会保険の加入が前提になります。一方、パート・アルバイトなどの短時間労働者は、会社の規模と本人の働き方の条件を満たしたときに加入の対象になります。比べるポイントは、本人の条件(労働時間・賃金・雇用期間・学生かどうか)と、会社側の条件(会社の規模)の2層です。短時間労働者向けの条件は2026年10月以降に段階的に広がるため、今の線引きと今後の線引きを分けて押さえることが大切です。
比較表で見る加入対象の違い
まずは全体像を表で比べます。
| 比較項目 | フルタイム(通常の労働者) | 短時間労働者(パート・アルバイト) |
|---|---|---|
| 加入の考え方 | 通常の労働者として、社会保険の加入が前提になる | 会社の規模と本人の働き方の条件を、すべて満たすと加入の対象になる |
| 週の所定労働時間 | 通常の所定労働時間で働く | 20時間以上であることが条件の一つ |
| 賃金の条件 | 短時間労働者向けの賃金の条件は使わない | 所定内賃金が月額8.8万円以上であることが条件の一つ(2026年10月に撤廃される予定) |
| 雇用期間・学生 | 短時間労働者向けの条件は使わない | 2か月を超えて雇用される見込みがあり、学生ではないことが条件 |
| 会社の規模の条件 | 短時間労働者向けの条件のため、フルタイム側の線引きには使わない | 現在は厚生年金の被保険者数が51人以上の会社が対象で、2027年10月から段階的に下がる |

今の加入条件をおさらい
短時間で働く人が社会保険に入るかどうかは、会社の規模と本人の働き方の両方で決まります。現在は、厚生年金の被保険者数が51人以上の会社(いわゆる「従業員50人超」の会社)で、次の条件をすべて満たすと加入の対象です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収に直すとおよそ106万円)
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生ではない(夜間・定時制などを除く)
この中で、月額8.8万円という賃金の条件が、よく「106万円の壁」と呼ばれてきたものです。加入すると手取りが減るため、あえて働く時間を抑える人が出る原因にもなっていました。
2026年10月に賃金要件がなくなる
厚生労働省の案内では、年金制度改正法にもとづき、賃金の条件(月額8.8万円以上)は令和8年(2026年)10月に撤廃されるとされています。撤廃にあたっては、最低賃金の状況を踏まえることも示されています。実施の状況は最新の案内で確認してください。
賃金の条件がなくなると、会社の規模の条件を満たす会社では、週20時間以上働く人は、賃金の額にかかわらず対象になります。「収入が低いから対象外」という整理が通用しなくなる点が、実務上の大きな変化です。
2027年から会社の規模の条件が下がる
もう一つの変化が、会社の規模に関する条件の段階的な縮小です。厚労省の案内では、次のように示されています。
- 現在:厚生年金の被保険者数が51人以上
- 2027年10月から:36人以上
- 2029年10月から:21人以上
- 2032年10月から:11人以上
- 2035年10月から:10人以下の会社にも広がる(規模の条件が撤廃)
つまり、今は対象外の小さな会社でも、数年先には順番が回ってきます。「うちは従業員が30人だから関係ない」と考えていた会社も、2027年10月と2029年10月の2回の節目で、対象に入る可能性があります。人数は、会社全体ではなく厚生年金の被保険者の数で数える点に注意してください。
顧問契約とスポット契約を比べる:相談のしやすさと向いている会社
制度の変更は毎年のように続きます。社会保険労務士にどう関わってもらうかを考えるときは、顧問契約とスポット契約の違いも参考になります。
会社の負担はどう変わるか
社会保険に入る人が増えると、保険料の会社負担も増えます。健康保険と厚生年金の保険料は、原則として会社と本人が半分ずつ負担します。パート・アルバイトの人数が多い会社ほど、年間の負担は大きくなります。
一方で、制度には負担をならすための経過措置も用意されています。厚労省の案内によると、新たに対象となる事業所が、働く人の保険料負担を軽くするために会社の負担割合を増やす場合に、3年間の支援(保険料調整制度)が使えるとされています。また、規模の条件を満たさない会社でも、従業員の2分の1以上の同意があれば、短時間の働き手が任意で加入できる仕組みがあります。活用できるかどうかは、自社の状況を持ち寄って専門家と確認しましょう。
加入すると手取りは減りますが、その分、本人の保障は厚くなります。会社員と同じ健康保険に入れば、病気やけがで仕事を休んだときの傷病手当金や、出産のときの出産手当金といった給付の対象になります。年金も、国民年金だけの場合より、将来受け取る額が増える仕組みです。給付の細かい条件は健康保険ごとに異なりますが、「負担が増える」という面だけでなく「保障が増える」という面もあわせて伝えると、納得感が違ってきます。説明のときは、本人の家族構成や、すでに配偶者の扶養に入っているかどうかで状況が変わる点にも触れておきましょう。
今のうちに進める準備
適用拡大への備えは、制度が始まってから動くのでは遅れがちです。次の順番で進めると、無理がありません。
- 現在の働き手の洗い出し:週の所定労働時間、賃金、雇用期間、学生かどうかを一覧にする
- 人数の見通し:自社の厚生年金の被保険者数がいつの節目で条件に入りそうかを確認する
- 負担額の試算:対象になりそうな人の保険料を試算し、年間の会社負担を見積もる
- 本人への説明:加入すると手取りは減るが、将来の年金や病気のときの保障が手厚くなることを、丁寧に伝える
- 働き方の希望の確認:週20時間未満に抑えたい人、時間を増やしたい人の意向を聞く
特に大切なのは、シフトを機械的に減らして対象から外そうとしないことです。人手不足の中で、働く時間を無理に減らすと、人材の流出につながります。労働時間を調整するかどうかは、本人の意向と店や現場の事情を合わせて決めましょう。
たとえば、シフト制で働くアルバイトが多い飲食店や小売店では、繁忙期に週の勤務時間が20時間を超える人が出てきます。「月によって時間が変わる人」をどう扱うかは、実務で迷いやすい点です。契約上の所定労働時間と、実際の働き方の両方を、定期的に確認する習慣をつくっておきましょう。判断に迷う場合は、年金事務所や社会保険労務士に早めに相談するのが安全です。対象の線引きや進める順番で迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。
手続きと社内ルールの更新
対象者が増えると、事務の量も増えます。入社時だけでなく、既存の従業員の労働時間が増えたときにも、資格取得の手続きが必要になるケースがあります。給与計算ソフトの設定、勤怠の管理、入退社の手続きの流れを、今のうちに見直しておきましょう。
また、就業規則や雇用契約書の見直しも欠かせません。「社会保険には加入しない」と書かれた古い契約書のひな形を使い続けると、実態と合わなくなります。契約更新のタイミングで、加入条件の書き方を整えておくと安心です。
まとめ
パート・アルバイトの社会保険は、2026年10月に賃金の条件が撤廃される予定とされ、2027年10月から会社の規模の条件が段階的に下がり、2035年10月には規模を問わず広がります。会社が今できる準備は、働き手の洗い出し、負担額の試算、本人への丁寧な説明、そして契約書と規程の更新です。負担の増加を見込んで計画的に動けば、人手の確保と両立させながら制度に対応できます。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。
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