目次
- 助成金と補助金は何が違う?
- 申請までの基本の流れ
- 「もらえない」落とし穴その1:順番と期限
- 落とし穴その2:会社側の条件
- 落とし穴その3:書類と運用の不備
- どんな目的の助成金があるのか
- 申請代行の勧誘にはご注意を
- 迷ったときのチェックポイント
- まとめ
「人を雇ったら助成金がもらえるらしい」。そう聞いて調べ始めたものの、種類が多すぎて、どれが自社に当てはまるのか分からない。あるいは、申請しようとしたら「もう間に合わない」と言われた。そんな経験をした経営者は少なくありません。雇用関係の助成金は、条件を満たせば受け取れる心強い制度ですが、手順と順番を間違えると一円ももらえないこともあります。この記事では、全体の流れと、「もらえない」と言われがちな落とし穴を整理します。
助成金と補助金は何が違う?
似た言葉ですが、性格は少し違います。
- 助成金:要件を満たして申請すれば、原則として受け取れる。雇用や人材育成の分野が中心で、主に厚生労働省が所管する
- 補助金:公募に応募して、審査で採択された事業だけが受け取れる。設備投資や新事業などが中心
雇用関係の助成金は、雇用保険の適用事業主であることが基本の前提です。つまり、従業員を雇用保険に加入させている会社が対象になります。社長ひとりだけの会社や、従業員を雇用保険に入れていない会社は、まずそこから整える必要があります。
補助金の探し方や申請の相談先については、行政書士の領域を扱った記事でも整理しています。
申請までの基本の流れ
助成金ごとに細かな違いはありますが、大まかな流れは共通しています。
- 制度を選ぶ。目的(正社員化、賃上げ、育児支援など)に合うものを探す
- 要件を確認する。会社の条件、対象者の条件、必要な書類をチェックする
- 事前の届出や計画を出す。制度によっては、取組みの前に計画の提出が必要
- 取組みを実施する。就業規則の整備、賃金の支払い、研修などを行う
- 支給申請をする。期限内に、証拠書類をそろえて提出する
- 審査を受け、支給される。追加資料を求められることもある
この中で、いちばん落とし穴になりやすいのは3番目です。取組みを始めた後では、計画が出せない制度が少なくありません。
「もらえない」落とし穴その1:順番と期限
典型的な失敗は、時期のズレです。
- すでに採用や転換を済ませてから、助成金の存在を知った
- 計画届の提出前に、取組みを始めてしまった
- 支給申請の期限を過ぎてしまった
たとえば、正社員化の助成金では、転換日の前日までに計画を提出する必要があります。申請の期限も、賃金の支払いが済んだ日の翌日から数えて2か月以内、というように短めです。採用や制度変更を決める前に、使える助成金がないか調べるのが鉄則です。
落とし穴その2:会社側の条件
次に多いのが、会社自体が条件を満たしていないケースです。厚生労働省の雇用関係助成金に共通して確認される主な項目は、次のとおりです。
- 過去に不正受給をして、不支給や返還の処分を受けていないこと(一定期間が経過していない場合は対象外)
- 労働保険料の未納がないこと
- 申請の前の一定期間に、労働関係法令の違反で送検されていないこと
- 暴力団などの反社会的勢力との関係がないこと
- 審査や調査に協力し、必要な書類を保管すること
さらに、制度によっては、一定期間内に会社都合の解雇などをしていないことが条件になる場合もあります。個別の要件は助成金ごとに異なるため、使いたい制度の最新の要領を、必ず読んでから動くようにしましょう。
落とし穴その3:書類と運用の不備
意外に多いのが、書類の不備です。助成金の審査では、取組みを実際に行ったことを、書類で確認します。
- 就業規則に必要な規定がない、または届出がされていない
- 賃金台帳、出勤簿、タイムカードの記録に食い違いがある
- 契約書や通知書が、実態と合っていない
- 残業代や社会保険の手続きが適切に行われていない
助成金のために急に書類を整えようとしても、過去の記録は直せません。日頃から労務管理をきちんと行っていることが、結局のところいちばんの近道です。
どんな目的の助成金があるのか
雇用関係の助成金は種類が多いため、「会社が何を実現したいか」から探すと整理しやすくなります。大きく分けると、次のような目的別の制度があります。
- 非正規の人を正社員にしたい(正社員化や処遇改善に関する助成金)
- 高年齢の人や障害のある人など、多様な人材を雇い入れたい
- 育児や介護と仕事の両立を支える制度を整えたい
- 社員の研修やスキルアップに取り組みたい
- 賃金の引き上げや、働く環境の改善を進めたい
それぞれ、対象者や助成の内容、期限が異なります。名称や金額は年度ごとに見直されることがあるため、最新の内容は厚生労働省やハローワーク、労働局の案内で確認してください。なお、制度の中身が良く見えても、自社の人員計画に合わなければ意味がありません。まず「今期に何人を、どんな形で雇うのか」を決めてから、制度を当てはめる順番がおすすめです。
申請代行の勧誘にはご注意を
助成金には、申請を手伝うという勧誘が多いのも特徴です。厚生労働省は、同省の委託事業者を名乗って、申請代行や無料の診断を持ちかける書面が送られているとして、注意を呼びかけています。
助成金の申請書類の作成や提出の代理は、社会保険労務士の業務です。依頼する場合は、資格の有無、報酬の仕組み、責任の範囲を契約前に確認しましょう。「必ずもらえる」という言い方をする業者は、慎重に見る必要があります。
また、資金の使い道や事業の見通しといった、経営の判断も大切です。助成金ありきで制度を決めてしまうと、本来の目的から外れてしまいます。事業のスケールを考える視点は、次の記事も参考になります。
迷ったときのチェックポイント
申請を考えたら、次の質問に答えられるかを確認してみてください。
- この制度の目的は、自社の課題と合っているか
- 取組みを始める前に、必要な届出や計画の提出は終わっているか
- 雇用保険の加入や保険料の納付に、問題はないか
- 就業規則や賃金の記録は、実態どおりに整っているか
- 申請期限を、カレンダーに入れてあるか
まとめ
雇用関係の助成金は、要件を満たせば受け取れる制度ですが、事前の計画届、申請期限、会社側の条件、書類の整備を一つでも外すと、受給できなくなります。大切なのは、取組みを始める前に調べること、そして日頃から労務管理を整えておくことです。勧誘には慎重に対応し、不安があれば早めに相談しましょう。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。



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