フリーランス新法、発注側のうっかり違反はここで起きる

目次
1. 働き方の頼み方は3つある
2. 比較表で見るフリーランス・雇用・派遣
3. 新法が守りたいのは誰か
4. 義務は発注側の規模で変わる
5. うっかり違反その1:条件の明示
6. うっかり違反その2:支払いの遅れ
7. うっかり違反その3:禁止行為
8. 忘れがちな4つの義務
9. まとめ
10. 合わせて読みたい

ロゴ制作はデザイナーに、記事の執筆はライターに、動画の編集は編集者に。外部の人に仕事を頼む方法は、フリーランスへの業務委託だけではありません。従業員として雇う方法もあれば、派遣で受け入れる方法もあります。頼み方が違えば、発注側・受注側に課されるルールも、働く人への保護も変わります。とくに2024年11月に「フリーランス新法」が施行されてからは、業務委託で頼む側にも守るべきルールがはっきり決まりました。この記事では、3つの頼み方を比較表で比べたうえで、フリーランス新法で発注側がうっかりやってしまいやすいポイントを、場面ごとに整理します。

働き方の頼み方は3つある

働き方の頼み方は、大きく3つに分けられます。仕事を頼む相手が個人事業主などの場合は業務委託(フリーランス)、自社で直接雇う場合は雇用、派遣会社を通して人を受け入れる場合は派遣です。

業務委託では、相手は自社の従業員ではなく、独立した事業者です。指揮命令関係がないことが前提で、働く時間や場所、進め方も、原則として相手の裁量に任されます。雇用では、労働基準法などの労働法が適用され、労働時間や賃金、安全への配慮など、雇用主としての義務が広く生じます。派遣では、派遣先の企業が働く人の日常の指揮命令をしますが、雇用主は派遣会社です。派遣先は、派遣法で定められた範囲の責任を負います。

比較表で見るフリーランス・雇用・派遣

比較項目フリーランス(業務委託)雇用派遣
契約の相手個人事業主などの独立した事業者従業員として自社で直接雇う派遣会社から派遣される人を受け入れる
指揮命令の関係原則なし。成果物の納品が中心あり。勤務時間や業務内容を指示できる派遣先が日常の指揮命令をするが、雇用主は派遣会社
適用される主なルール民法の請負・準委任契約など。フリーランス新法労働基準法、労働契約法、社会保険関連法労働者派遣法
給与・報酬の支払い契約で決めた報酬。請求書払いが一般的賃金として毎月支払い。社会保険料の負担あり派遣会社へ派遣料金を支払い
社会保険原則、相手が自分で加入会社が加入手続きと保険料負担をする派遣会社が加入手続きをする
契約の終わり方契約期間の満了や解除条件による解雇には正当な理由と手続きが必要派遣契約の期間や条件による

この記事で中心に扱うのは、左の列の業務委託です。雇用の場合は労働基準法などが守ってくれますが、業務委託は対象外でした。その空白を埋めるために、発注する側へルールを課したのが、フリーランス新法です。

新法が守りたいのは誰か

正式な名前は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、2024年11月1日に施行されました。ここでいう「特定受託事業者」とは、従業員を使わずに業務を受託する事業者のことで、フリーランスが該当します。発注する側は「特定業務委託事業者」と呼ばれ、業務委託の発注者です。

ポイントは、雇用ではなく業務委託の関係に適用されることです。雇用の場合は労働基準法などが守ってくれますが、業務委託は対象外でした。その空白を埋めるために、発注する側へルールを課したのが、フリーランス新法です。事業者同士の取引だからといって、力関係の差をそのままにしないための法律だと考えると分かりやすいでしょう。

なお、この法律を担当するのは、公正取引委員会と厚生労働省などです。違反の疑いがあれば、フリーランス側がこれらの窓口に申し出ることができ、必要に応じて調査や指導、勧告が行われます。申し出たことを理由に、発注側が不利益な扱いをしてはいけないことも定められています。

義務は発注側の規模で変わる

実は、発注側の会社に課される義務は一律ではありません。

  • 従業員を使っていない発注者:基本は取引条件の明示
  • 従業員を使っている発注者:取引条件の明示に加え、報酬の支払期日の設定、禁止行為の遵守、募集情報の的確な表示など、ほぼすべての義務

つまり、会社として従業員がいる場合は、ほぼすべての義務を意識する必要があります。さらに、禁止行為は1か月以上の業務委託、育児や介護への配慮と中途解除の予告は6か月以上の業務委託と、期間によって対象が変わる義務もあります。取引の期間を意識して、適用される義務を確認しましょう。

うっかり違反その1:条件の明示

最初の落とし穴は、条件を口頭やスタンプ1つで済ませてしまうことです。発注するときは、業務の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を、書面または電磁的方法で明示しなければなりません。メールやチャットでも、内容が残る形であれば電磁的方法にあたります。

とはいえ、堅苦しく考える必要はありません。たとえば、「この内容で、この金額で、この日までにお願いします」と、チャットで送るだけでも明示にあたります。ただし、フリーランスから書面の交付を求められた場合は、書面で渡す必要があります。

実務では、次のような場面でつまずきがちです。たとえば、担当者が電話で「じゃあ、お願いします」と伝え、細かい内容は後日メールで、と先送りにしたとします。その間にフリーランスが作業を始めてしまうと、条件の明示が遅れたことになります。発注のメールは、作業開始前に送る習慣をつけましょう。

うっかり違反その2:支払いの遅れ

2つ目は、報酬の支払期日です。報酬は、成果物を受け取った日から60日以内で、できる限り短い期間内に支払う必要があります。社内の締め日が月末で、支払いが翌々月末になるような運用は、60日を超えてしまうおそれがあります。

「請求書が届いてから処理するから」と考えがちですが、期限は請求書ではなく、受け取った日から数えます。フリーランスは資金繰りの余裕が小さいことが多いので、支払いの遅れは信頼にも響きます。経理の締め日と支払日を、受け取った日から数えて見直してみてください。

また、検収(納品物のチェック)に時間がかかっても、期限は延びません。確認が長引きそうなときは、先に連絡して内容を詰めるほうが、双方にとって安全です。

うっかり違反その3:禁止行為

3つ目が、1か月以上の業務委託で禁止される7つの行為です。

  • 受領拒否(納品されたものを理由なく受け取らない)
  • 報酬の減額
  • 返品
  • 買いたたき(相場より著しく低い報酬を一方的に決める)
  • 購入や利用の強制
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更ややり直し

とくに起きやすいのが、やり直しの無制限な依頼です。当初の指示になかった修正を何度も求め、その分の報酬は払わない、という形は、問題になるおそれがあります。修正の回数や範囲は、最初の条件に含めておくとトラブルを防げます。

買いたたきも、気づきにくい違反です。たとえば、「前回の半額でやってくれたら、次も継続して出す」といった持ちかけは、仕事の量や難易度に見合わない金額を一方的に求めることにつながります。見積もりは相手の提示を尊重し、変更する場合は理由を説明して合意を取るようにしましょう。

忘れがちな4つの義務

最後に、見落とされやすい義務を挙げます。

  • 募集情報の的確な表示:求人のようにフリーランスを募るとき、内容や報酬を実際と違う形で見せない
  • 育児・介護への配慮:6か月以上の業務委託で、フリーランスが育児や介護と両立できるよう配慮する
  • ハラスメント対策:フリーランスに対するハラスメント防止のための体制整備
  • 中途解除の予告:6か月以上の業務委託を途中で解除するときは、原則として30日前までに予告する

とくに契約の打ち切りは、思い立ってすぐ伝えたくなる場面ですが、予告期間が必要です。担当者が個人の判断で連絡してしまわないよう、社内の手順を決めておくとよいでしょう。

どの進め方が自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

まとめ

フリーランス・雇用・派遣は、頼み方が違えば、発注側のルールも働く人への保護も変わります。そのうえで、フリーランス新法は、業務委託で発注する会社が守るべきルールを具体的に定めています。まず押さえたいのは、取引条件の明示、60日以内の支払い、7つの禁止行為、そして期間によって変わる育児・介護への配慮と中途解除の予告です。発注のたびに条件を書面やメールで残し、支払日をカレンダーで管理するだけでも、うっかり違反の大半は防げます。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(弁護士)に確認してください。

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1件のコメント

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