普通借家契約と定期借家契約を比べる:店舗・オフィスの賃貸

目次
1. まず確認したい「契約の種類」
2. 比較表で見る普通借家契約と定期借家契約
3. 原状回復、どこまで元に戻す?
4. 契約書で見るべき5か所
5. 立ち退き・終了の扱いはどう違うか
6. 貸す側が気をつけたいこと
7. 揉めたときの進め方
8. まとめ
9. 合わせて読みたい

オフィスや店舗を借りるとき、契約書にサインをする瞬間は意外とあっさりしています。ところが、数年たって退去するときになって、「原状回復の見積もりが想像よりずっと高い」「貸主から急に出ていってほしいと言われた」と驚く人は少なくありません。借りる側も貸す側も、揉めやすいポイントは実はおおむね決まっています。その土台になるのが、普通借家契約と定期借家契約の違いです。この記事では、2つの契約を比べながら、契約書のどこに注目すればよいのか、順番に整理しましょう。

まず確認したい「契約の種類」

賃貸借契約には、大きく2種類あります。ここを見落とすと、のちの立ち退きの話が大きく変わります。

  • 普通建物賃貸借契約:期間が終わっても、原則として更新される契約。借りる側が法律で手厚く守られています。
  • 定期建物賃貸借契約:期間が終わったら、更新されずに終了する契約。書面での契約と、事前の説明が必要です。

「2年の契約」と書いてあっても、普通借家なのか定期借家なのかで、2年後に住み続けられるかどうかがまったく違います。まず契約書の表紙や条文のタイトルを確認してみてください。

比較表で見る普通借家契約と定期借家契約

まずは全体像を表で比べます。

比較項目普通借家契約定期借家契約
期間が終わったとき原則として更新される更新されずに終了する
終了させる条件貸主には「正当な事由」が必要。更新拒絶は期間満了の1年前から6か月前までの間の通知が必要期間満了の前に、貸主から終了することを借主に通知しておく必要がある
借りる側の守られ方借地借家法で手厚く守られる期間が決まっている前提で、終了時期から逆算した計画が必要
契約の形式一般的な書面の契約書面での契約と、事前の説明が必要
再契約更新により住み続けられる再契約は貸主との合意次第。貸主に応じる義務があるとは限らない
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店舗・オフィスでは「いつまで借りられるか」が事業計画そのものに影響します。内装や設備にお金をかける前に、どちらの契約なのかを必ず確かめてください。

原状回復、どこまで元に戻す?

退去のときに最も揉めやすいのが原状回復です。民法では、借主が借りた物を返すときに、通常の使い方による傷みや経年変化は、原状回復の対象外と定められています(2020年4月施行の改正民法)。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、経年変化や通常の使用による傷みの修繕費は、賃料に含まれているという考え方が示されています。借主が負担するのは、故意や不注意、通常の使い方を超える使用によって生じた傷みです。

ただし、このガイドラインは、主に住居の賃貸借を念頭に置いたものです。オフィスや店舗では、契約書の特約で借主の負担が広く定められていることが少なくありません。たとえば、「退去時は内装をすべて撤去し、スケルトン(骨組みだけの状態)に戻す」といった内容です。こうした特約が有効かどうかは、内容の明確さや負担の範囲などを踏まえて判断されるため、サインする前に読み込むことが肝心です。

原状回復の費用をめぐっては、退去の見積もりが出てから争うのでは遅いことも多いものです。契約の前、あるいは内装工事をする前に、退去時にどこまで戻すのかを貸主と確認し、書面に残しておくと、数年後の食い違いを防げます。たとえば、自分で設置した間仕切りや看板、配線などを撤去する範囲を、図面や写真で共有しておく方法があります。

契約書で見るべき5か所

借りる側が、契約前にとくに確認したいのは次の項目です。

  • 原状回復の範囲と特約:どこまで戻すのか、費用の負担者は誰か
  • 敷金・保証金の扱い:返還される条件、差し引かれる項目(償却など)
  • 契約期間と更新:更新料の有無、解約するときの予告期間
  • 賃料の改定:増額・減額の条件
  • 中途解約の条件:違約金や、事前通知の期限

敷金は、賃貸借が終わって部屋を返したときに、未払い賃料や修繕費などを差し引いた残りが返ってくるお金です。差し引かれる内訳は、見積書や請求書で必ず確認しましょう。「契約期間と更新」の項目は、普通借家か定期借家かで読み方が変わります。更新料や再契約の扱いも、あわせて確かめてください。

立ち退き・終了の扱いはどう違うか

貸主から「建て替えるので出ていってほしい」と言われても、すぐに従う必要があるとは限りません。普通借家では、借地借家法により、貸主が契約を更新しない、または解約を申し入れるには、「正当な事由」が必要とされています。

正当事由は、貸主と借主それぞれの建物を使う必要性、これまでの経緯、建物の現在の状況などを総合的に見て判断されます。そのうえで、貸主が立退料を提示することが判断材料の一つになる場合もあります。

また、期間の定めがある契約で更新を拒絶するには、原則として期間満了の1年前から6か月前までの間に、貸主から通知を出す必要があります。この期限を過ぎると、更新拒絶の通知としては通りにくくなります。

借りる側は、通知書を受け取ったら、内容と日付を確認して、まず専門家に相談するのが安全です。むやみに合意書にサインしないでください。逆に、退去を受け入れる場合でも、移転にかかる費用や時間を考えたうえで、条件を話し合う余地があります。

ちなみに、貸主が提示する立退料の額に決まった計算式があるわけではありません。移転にかかる費用や、営業を続けられなくなることによる影響など、個別の事情をふまえて話し合われるのが実情です。

一方、定期借家の場合は、期間が満了すると契約が終わるのが原則で、正当事由は要りません。その代わり、貸主が期間満了の前に終了することを通知しておく必要があるなど、形式の決まりがあります。どちらの契約かで、同じ「出ていってほしい」でも進め方がまったく違う点が、比べるとよく分かります。

貸す側が気をつけたいこと

貸す側にも、気をつけるべき点があります。

  • 退去を求めたいなら、早めに動く:通知期限があるため、直前では間に合いません。
  • 立ち退きは「正当な事由」が前提:普通借家では、言い分だけで進めず、立退料を含めた条件を整理する。
  • 原状回復の特約は具体的に書く:あいまいだと、請求が認められにくくなる。
  • 退去時の立ち会いと記録:写真を残し、双方が確認した内容を書面にする。
  • 賃料滞納への対応:督促の記録を残し、早めに専門家に相談する。

とくに入居時と退去時の記録は、費用負担の根拠になります。入居の際に、傷や汚れの状態を写真で記録し、貸主と借主の双方で確認しておくと安心です。

定期借家の場合は、期間が満了すると契約が終わるのが原則です。ただし、貸主が期間満了の前に、終了することを借主に通知しておく必要があるなど、決まりがあります。更新の「再契約」を期待していても、貸主に応じる義務があるとは限りません。事業の計画は、契約の終了時期から逆算して立てておくことをおすすめします。

揉めたときの進め方

話し合いがこじれたときは、段階を踏みます。

  • 契約書と、写真・見積書などの証拠を整理する
  • 書面で、争点(何について、いくらか)を明確にして連絡する
  • 第三者の関与(弁護士への相談、調停など)を検討する

感情的になって、鍵を勝手に交換する、荷物を勝手に処分する、といった自力での解決(自力救済)は避けるべきです。かえって責任を問われるおそれがあります。どの進め方が自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

まとめ

賃貸借のトラブルは、契約の種類、原状回復の特約、更新・解約の条件の3点を契約前に確認しておくことで、かなり防げます。普通借家は更新が原則で借りる側が手厚く守られ、定期借家は期間満了で終了するのが原則です。立ち退きを求められたときは、契約の種類に加えて、正当事由と通知期限を確認し、むやみにサインしないことが大切です。入居時と退去時の記録も、忘れずに残しましょう。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(弁護士)に確認してください。

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L28 図解2

1件のコメント

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