産業廃棄物と一般廃棄物を比べる:排出する会社の責任と委託の違い

「ごみの処理は、業者さんに任せているから大丈夫」。工場、建設現場、飲食店、クリニックなど、事業をしている会社なら、一度は聞くセリフです。ところが、事業活動で出る廃棄物の多くは産業廃棄物にあたり、出した会社が最後まで責任を負う仕組みになっています。委託した先が不法投棄をしたら、委託した側も責任を問われるおそれがあります。この記事では、産業廃棄物と一般廃棄物を比較表で並べ、排出する会社が押さえておきたい、許可・契約・マニフェストの基本を整理します。

処理の責任は出した会社にある

環境省の資料では、産業廃棄物の処理責任は排出した事業者にあるとされています。支店長などに契約を任せていても、責任が事業者から離れることはありません。

事業活動で出るごみには、産業廃棄物と、事業系の一般廃棄物があります。産業廃棄物は、法令で定められた種類のものが該当します。何がどちらにあたるのかは、自治体や専門家に確認すると確実です。

そして、原則は自分で処理することで、自分で処理できない場合に、許可を持つ業者へ委託します。委託すれば終わりではなく、委託のルールを守ってはじめて、責任を果たしたことになります。

参考:環境省(産業廃棄物の処理・排出事業者責任)

比較表で見る産業廃棄物と一般廃棄物

まずは2つの区分を表で比べます。

比較項目産業廃棄物一般廃棄物(事業系一般廃棄物を含む)
対象事業活動で出る廃棄物のうち、法令で定められた種類のもの産業廃棄物以外の廃棄物。事業から出るものは事業系一般廃棄物と呼ばれる
処理の責任排出した事業者にある市町村が処理を担うことが原則で、事業者は適正な排出・委託が求められる
委託のルール許可を持つ業者に、書面で契約して委託する市町村のルールに沿って処理・委託する
マニフェスト交付が必要で、流れを最後まで確認する産業廃棄物のマニフェスト制度の対象ではない
保存の管理契約書とマニフェストを5年間保存する区分や自治体のルールに応じて管理する
産業廃棄物と一般廃棄物の比較

違いが大きく出るのは、責任の所在と、委託の進め方です。産業廃棄物は、許可・書面契約・マニフェストという決まった手順を踏むことで、排出した会社の責任を果たす仕組みになっています。この記事で詳しく見ていくのは産業廃棄物です。一般廃棄物にあたるかどうか迷うものは、自治体や専門家に確認してください。

委託するときの基本ルール

排出事業者が産業廃棄物の処理を委託するときの基本は、次の3つです。

  • 許可を持つ業者に委託する:無許可の業者に頼んではいけません
  • 書面で契約する:口頭は認められません。委託の回数や量に関係なく、契約書が必要です
  • マニフェストを交付する:廃棄物の流れを、最後まで確認します

たとえば、収集運搬と処分を別々の業者に頼む場合は、それぞれの業者と契約します。同じ業者が両方の許可を持っているなら、1通の契約書でまとめられます。

参考:e-Gov法令検索(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

許可証で確認すべきこと

契約を結ぶ前に、業者の許可証を確認します。見るポイントは次のとおりです。

  • 許可の種類が合っているか(収集運搬か、処分か)
  • 自社が出す廃棄物の種類が、許可の範囲に含まれているか
  • 有効期限が切れていないか
  • 収集運搬の場合は、廃棄物を積む場所と降ろす場所の、両方の自治体の許可があるか

「許可を持っている業者」でも、自社の廃棄物の種類が許可に入っていないことがあります。許可証は、写しを手元に残すことが大切で、契約書にも添付します。

合わせて読みたい:契約書の確認、弁護士に頼む前に社内でそろえるもの

契約書に書くべきこと

委託契約書には、法令で決まった記載事項があります。環境省の資料では、共通の事項として、廃棄物の種類、数量、契約の有効期間、料金などの8項目があり、運搬では2項目、処分では3項目が加わるとされています。

記載が足りなかったり、実際の内容と食い違っていたりすると、委託基準違反として罰則の対象になります。インターネットで入手したひな形をそのまま使うのではなく、自社の廃棄物の種類や処理の方法に合わせて、内容を確認してください。

また、契約書は、契約が終わった日から5年間、許可証の写しなどの添付書類とあわせて保存します。契約の更新時に、書類を差し替えて整理しておくと管理しやすくなります。

マニフェストの流れと期限

マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、廃棄物の行き先を追いかけるための書類です。排出事業者が、廃棄物の引き渡しのときに交付し、処理が終わると、運搬や処分の終了を知らせる写しが返送されます。

埼玉県の案内などをもとにまとめると、確認すべき期限は次のとおりです。

  • 運搬や中間処理の終了を知らせる票(B2票・D票)が、交付から90日(特別管理産業廃棄物は60日)を過ぎても戻らない場合
  • 最終処分の終了を知らせる票(E票)が、交付から180日を過ぎても戻らない場合

こうした場合は、速やかに委託先に問い合わせ、状況を把握します。必要な措置を取り、30日以内に都道府県知事へ報告しなければなりません。マニフェストの交付状況は、前年度分を毎年6月30日までに知事へ報告します。電子マニフェストを使っている場合は、この報告は不要です。マニフェストの保存期間は、交付日から5年間です。

責任を問われる場面と罰則

不法投棄などの不適正な処理が行われた場合、排出事業者が責任を問われ、撤去を求められることがあります。環境省の資料によると、不法投棄などの罰則は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方です。法人の場合の罰金は、3億円以下とされています。

「安いから」という理由だけで業者を選ぶと、結果的に高くつく可能性があります。たとえば、相場から大きく外れた安い見積もりの業者には、なぜ安いのかを確認する姿勢が必要です。価格の安さは、リスクのシグナルになることがあります。

また、2010年の法改正で、排出事業者が処理の状況を確認することが、努力義務として明確になりました。契約したあとも、現地を見たり、報告を求めたりすることが望ましいとされています。

外部に任せた仕事で問題が起きたときの考え方は、当メディアの「外注先とのトラブル:検収・やり直し・支払い遅延の整理術」でも紹介しましたが、任せた側が確認すべき点を事前に決めておくことが大切です。

電子マニフェストという選択肢

紙のマニフェストは、7枚つづりの複写式で、返送された票を一枚ずつ確認して保管する手間がかかります。これに対して、電子マニフェストは、引き渡しから3日以内に排出事業者が登録し、運搬や処分の終了報告も、それぞれ終了から3日以内に行う仕組みです。情報は、公益財団法人の情報処理センターが保存します。

電子化のメリットは、返送の確認や保存の手間が減り、交付状況の報告が不要になることです。一定の事業者には利用が義務づけられていますが、そうでない会社でも、取引先が対応していれば、導入を検討する価値があるでしょう。

紙と電子の違いの比べ方は、ニコニコデスクの「紙の契約書と電子契約、外注で比べる4つの点【2026年10月】」でも紹介しましたが、電子化の前に保存や確認の手間を比べておくと判断しやすくなります。

参考:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(電子マニフェストJWNET)

社内の体制づくり

排出事業者として、社内で整えておきたいことは次のとおりです。

  • 出る廃棄物の種類と量の一覧
  • 委託先ごとの許可証と契約書の管理表(有効期限つき)
  • マニフェストの交付と返送の確認を行う担当者
  • 担当者が代わっても引き継げる手順書

小さな会社でも、一人の担当者に任せきりにすると、異動や退職で管理が崩れます。表にまとめて複数人で見られる状態にしておきましょう。

行政書士に相談できること

産業廃棄物の収集運搬業や処分業の許可申請は、行政書士が扱う代表的な分野です。排出する会社が自ら運搬するケースもあり、その場合の手続きの相談もできます。

また、廃棄物の処理に関する委託契約書の作成や、見直しも、書類作成の専門家に相談できる部分です。契約書の内容に法的な争いの見込みがある場合は、弁護士の領域になります。手続きは行政書士、紛争は弁護士と、場面で使い分けてください。どの進め方が自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

合わせて読みたい:知事許可と大臣許可、一般許可と特定許可を比べる:建設業許可の選び方

手続きや判断で迷うことがあれば、一人で抱え込まずに専門家へ相談するのが確実です。運営元のコミッターズでも、経営の困りごとの相談を受け付けています。まずはお問い合わせページからご連絡ください。

まとめ

産業廃棄物は、排出した会社が最後まで責任を持ちます。一般廃棄物とは責任の所在や委託のルールが違うため、まず自社の廃棄物がどちらにあたるかを見極めることが出発点です。許可を持つ業者に、書面で契約し、マニフェストで流れを確認することが基本です。契約書とマニフェストは、どちらも5年間保存します。委託先の許可証の確認、契約書の記載内容、マニフェストの返送期限の管理を、社内の仕組みとして整えておきましょう。

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