電子契約は紙の契約と同じ効力がある? 証拠力と保存の基本

目次
1. 契約は、もともと「紙」でなくても成立する
2. 紙の契約と電子契約を比べる
3. 電子署名の2タイプと、タイムスタンプの役割
4. 紙や公正証書が必要な契約もある
5. 導入前の確認ポイント
6. まとめ

「紙の契約書に判子をもらう時間がもったいない」「取引先から電子契約にしたいと言われたけれど、本当に大丈夫?」。電子契約が当たり前になりつつある今、こんな戸惑いを抱える経営者は少なくありません。結論から言うと、電子契約は法的にきちんと成り立ちます。ただし、紙の契約とは、証拠としての扱いや手間、保管のルールが違います。この記事では、紙の契約と電子契約を比べながら、導入前に見ておきたいポイントを整理します。

契約は、もともと「紙」でなくても成立する

そもそも、契約は当事者の合意があれば成立するのが原則です。民法522条2項は、契約の成立に書面の作成その他の方式は必要ないと定めています。口頭でも成り立つのです。

では、なぜ契約書を作るのか。理由は、後から「言った・言わない」にならないようにするためです。トラブルになったとき、裁判では「この文書は本当に本人が作ったものか」が問われます。紙と電子の違いを考えるときのポイントも、結局ここにあります。つまり、電子契約が有効かどうかというより、争いになったときに、合意の存在を証明できる形になっているかが実務の焦点です。

紙の契約と電子契約を比べる

2つの進め方を、項目ごとに比べます。

比較項目紙の契約電子契約
証拠としての扱い署名・押印した原本で、合意の存在を示す本人による電子署名がある電子データは、電子署名法3条で真正に成立したものと推定される
印紙税課税文書にあたる場合は必要になる印紙税の課税対象となる文書を作成したことにならないとされている
締結の手間印刷・押印・郵送のやりとりが要るオンラインで完結し、郵送の手間が省ける
保管原本を物理的に保管する電子帳簿保存法の「電子取引」にあたり、データのまま保存する義務がある
向いている契約公正証書などが求められる契約、相手が電子を受け付けない場合頻度の高い日常的な取引

証拠の面で頼りになるのが、電子署名法です。同法3条の推定を受けるには、電子署名に次の2つの性質が必要です(同法2条1項)。

  • そのデータが、署名した人の作成によるものだと示せること(本人性)
  • そのデータが、あとから改ざんされていないか確認できること(非改ざん性)

さらに3条の推定を受けるには、「本人だけが行える」ように管理された署名であることが求められます。判子で言えば、実印のような管理が必要というイメージです。なお、推定が働かない方式なら無効、という意味ではありません。ほかの証拠と合わせて、契約の成立を主張することは可能です。ただ、証明のしやすさに差が出ます。

保存の違いも大切です。電子データでやり取りした契約書や見積書、請求書などは、受け取ったものだけでなく送ったものもデータのまま保存します。紙に印刷しただけの保存は認められません。改ざん防止(真実性)と、見やすさ・検索できること(可視性)の要件を満たす必要があり、事務処理規程を作って守る、タイムスタンプ付きで受け取る、訂正削除の履歴が残るシステムを使うなど、いくつかの方法から選べます。

電子署名の2タイプと、タイムスタンプの役割

電子契約のなかでも、署名の方式は大きく2つのタイプに分かれます。

  • 当事者署名型:契約当事者が、自分名義の電子証明書で署名する方式。本人性を認証局が裏づける
  • 立会人(事業者署名)型:契約当事者の指示を受けて、サービス事業者が署名を行う方式。メール認証などで手軽に使える

立会人型は、導入が簡単で現在の主流です。この方式についても、総務省・法務省・経済産業省がQ&Aで見解を示しており、一定の要件のもとで電子署名法の推定が及びうるとされています。どちらが絶対に正しいという話ではなく、取引の重要度に合わせて選ぶのが基本です。

もう1つ、よく聞くのがタイムスタンプです。これは「この時刻には、その電子データが存在していて、以降は変更されていない」ことを示す仕組みです。署名の有効期間が切れた後も、長期間にわたって「いつ作られたか」を証明するのに役立ちます。実務では、署名の記録(誰が、いつ、どのメールアドレスで操作したか)や、送受信のログも大切な証拠になります。契約サービスを選ぶときは、こうした記録が長く残り、必要なときに取り出せるかを見ておくと安心です。

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紙や公正証書が必要な契約もある

電子契約が使える範囲は広がっていますが、すべての契約で使えるわけではありません。法律で、書面や公正証書の作成が決められている契約があります。

たとえば、事業用の土地を長期で貸す「事業用定期借地権」の設定契約は、公正証書で行うことが求められます。事業のための借入に関する個人の保証についても、公証人による意思確認の手続きが必要です。

また、取引先の社内規定や業界の慣行で、電子契約を受け付けないケースもあります。自社の契約の種類を洗い出し、電子でできるもの・できないものを仕分けておくと、導入後に慌てずに済みます。

導入前の確認ポイント

サービスを選ぶ前に、次の点を社内で確認しましょう。

  • どの契約を電子化するか(頻度の高いものから始める)
  • 署名の方式(当事者署名型か立会人型か)と、取引先が対応できるか
  • 保存先、保存期間、検索のしやすさ
  • 契約書の原本管理や、権限の設定(誰が送信・承認するか)
  • サービスが終了したときのデータの持ち出し方法

とくに、解約後にデータをどう取り出せるかは、契約前に確認しておきたい点です。長く保存する契約書を、サービスの中だけに置いておくのは危険です。

取引先に電子契約を提案するときは、「紙より便利です」と伝えるだけでなく、どの方式で署名するのか、締結後の書類をどう共有するのかを、あらかじめ説明できるようにしておくとスムーズです。相手の社内ルールで、使えるサービスが決まっていることもあるため、最初の打診の段階で「御社で使えるサービスはありますか」と聞いてしまうのもひとつの手です。

また、紙の契約書をスキャンしてPDFで送るだけの運用は、電子契約とは別物です。スキャンしたPDFには電子署名がなく、原本の管理も別に必要になります。「電子的にやり取りしている」ことと「電子署名で締結している」ことは違う点を、社内でも共有しておきましょう。

自社の契約のどれを電子化すべきか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

まとめ

紙の契約と電子契約は、どちらも契約として成り立ちます。違いは、証拠としての扱い、印紙税、締結の手間、保管のルールにあります。大切なのは、署名の方式を取引に合わせて選ぶこと、電子帳簿保存法に沿って保存すること、紙が必要な契約を見分けることの3つです。導入前に、社内の契約の種類と取引先の対応状況を棚卸ししておきましょう。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(弁護士)に確認してください。

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