素敵な内装を整え、道具もそろえた。あとは看板を出すだけ、というところで「保健所への届出は済んでいますか」と言われて、慌てた。そんな話は、サロンの開業ではよくある失敗です。同じ「サロン」でも、美容室やネイル、エステ、まつ毛エクステ、リラクゼーションでは、必要な手続きがまったく違います。資格や届出が必要なものと、そうでないものが混在しているため、開業前に整理しないと、あとで営業停止やトラブルにつながりかねません。この記事では、美容・エステ系のお店を開くときの許可・届出・注意点を、施設・人員・広告・契約の4つの面から整理します。
まず「どの施術をするか」で決まる
サロンの手続きは、お店の名前ではなく、提供する施術の中身で決まります。大きく3つに分けて考えるとスッキリします。
- 美容師法の対象になる施術:髪を切る・整える、パーマ、カラー、メイク、まつ毛エクステンションなど
- 特に資格や届出がないエステ・リラクゼーション:フェイシャル、ボディの手技ケアなど(ただし、他の法律の規制を受ける)
- 医療行為にあたるもの:医師などの有資格者が行う必要がある施術
厚生労働省の美容師法の案内によると、まつ毛エクステンションや染毛も「美容」の行為に含まれています。そのため、エステサロンの一部メニューとして行う場合でも、美容師の免許と、美容所としての手続きが必要になります。
予定する施術、使用する設備、開業予定日をまとめてご連絡ください。美容所の届出や設備確認が必要か、コミッターズと開業前の確認事項を整理できます。施術内容と営業形態を整理し、確認すべき窓口を明確にします。
美容室・まつ毛サロンは「美容所」の手続き
美容師法の対象になる施術を行うお店は、次の手続きが必要です。
- 美容師の免許:美容を仕事にするには、厚生労働大臣の免許が必要。美容師養成施設で学び、国家試験に合格して取得する
- 美容所の開設届:開設・廃止は、都道府県知事(保健所を置く市や特別区では市長・区長)に届け出る
- 使用前の検査確認:保健所による検査確認を受けないと、お店を使い始められない
- 管理美容師の配置:美容師が複数いる美容所では、衛生管理の責任者として管理美容師を置く。美容師歴3年以上で、指定の講習を修了した人が対象
検査を受ける前に営業を始めてしまうのは、典型的な失敗です。内装工事の完了後に、検査の予約を取ると、開業日に間に合わないことがあります。工事前の段階から、図面を持って保健所に相談しましょう。
店舗の内装工事の手順は、はじめて商店街の店舗 内装工事 手順と契約前に確かめる点も参考になります。
スタッフと施術場所のルール
お店を開く際には、人と場所の面でも決まりがあります。
- 免許のないスタッフに美容行為をさせない:アシスタントが行ってよい作業の範囲は、事前に整理しておく
- 施術は原則として美容所で行う:出張での施術は、病気などで来店できない人や、婚礼の直前など、例外的な場合に限られる
- 衛生管理を守る:器具の消毒、タオルの管理、換気や清掃。立入検査で確認されることがある
- 改善されないと処分もある:衛生上の措置を怠った場合は、業務停止や閉鎖の命令が出ることがある
たとえば、「友人の自宅に出張して、まつ毛エクステをする」「自宅の一室で、届出なしに施術する」といったケースは、トラブルになりやすい典型例です。副業から始める場合も、自宅の一室を使うなら、美容所としての基準を満たせるかを先に確認しましょう。
ちなみに、ネイルサロンは、美容師法の対象外として扱われるのが一般的です。ただし、衛生管理や契約・広告のルールは同じように守る必要があります。
エステ・リラクゼーションの場合
エステティックサロンそのものには、美容所のような開設届や、国家資格は必要ありません。ただし、「届出がいらない=何でもできる」わけではありません。
- 医療行為にあたる施術はできない:どの行為が医療行為に当たるかは、国の通知などで整理されている。医療用の機器や、体に傷をつける行為などは、慎重な確認が必要
- 契約のルールがある:エステは、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たる場合がある
- 他の法律も関わる:食品、化粧品、物品販売など、取り扱うものによって別のルールがある
とくに、メニューを増やすときは、「この施術は誰がやってよいのか」を、その都度確認する習慣が大切です。
広告表現のルールについては、景品表示法と薬機法、広告表現のNGラインを比べるでも取り上げています。
契約のルール:特定商取引法
エステの契約では、契約期間が1か月を超え、かつ総額が5万円を超えるものは、特定継続的役務提供に当たるとされています。回数券や長期コースが典型です。
この場合、利用者には次のような保護があります。
- クーリング・オフ:法律で定められた書面を受け取ってから8日以内なら、契約を解除できる
- 中途解約:契約期間内であれば、理由を問わず解約できる。事業者が請求できる金額には上限がある
- 契約書面の交付:契約の内容を書いた書面を渡す義務がある
事業者の側は、書面の記載、解約時の精算ルール、勧誘の仕方を整えておく必要があります。契約書のひな形は、専門家に見てもらうと安心です。
契約書のそろえ方は、契約書の確認、弁護士に頼む前に社内でそろえるものも参考になります。
回数券・長期コースの契約書や解約条件を、導入前に確認したい方はコミッターズへお問い合わせください。広告表示と契約内容を確認する相談先を整理します。販売方法と契約書面について、事前に確認する項目を整理します。
開業後に気をつけたいこと
開業後も、決まりごとは続きます。
- 変更の届出:開設者の変更、施設の改装、管理美容師の交代などがあれば、保健所への届出が必要になる場合がある
- スタッフの入れ替わり:管理美容師の要件を満たす人が辞めたときに、すぐ代わりを確保できるか
- お客様とのトラブル:施術後の肌トラブルや、解約をめぐるクレームに備え、記録を残しておく
- 個人情報の管理:カルテや予約情報には、肌質や体調など、センシティブな情報が含まれる
とくに、カルテの管理は見落としがちです。紙や端末の保管場所、閲覧できる人、処分の方法を決めておくと、情報漏えいのリスクを減らせます。
個人情報の備えは、個人情報保護法の改正に備える:中小企業の実務チェックも参考になります。
店販を増やす前の見直しは、コミッターズの美容室の店販を増やす前に見直す5つの質問も参考になります。
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広告表現で気をつけること
サロンは、広告で売上が決まります。ただ、次のような表現は、トラブルになりやすい代表例です。
- 「絶対に痩せる」「必ず若返る」など、効果を保証する表現
- 実際より安く見せる料金表示(後から追加料金がかかる)
- 根拠のない「ナンバーワン」「満足度100%」
- 化粧品や機器の効能を、事実以上にうたう表現
クチコミやモニター体験の投稿を依頼する場合も、広告であることが分かるようにする必要があります。
価格表示の確認点は、はじめて商店街の小さな店の年末セール価格表示、出す前の確認点も参考になります。
開業前の確認リスト
最後に、準備の順番を整理します。
- 提供するメニューを書き出し、それぞれの根拠となる法律を調べる
- 物件を契約する前に、保健所に図面を持って相談する
- 免許を持つスタッフ、管理美容師が必要か確認する
- 契約書面と、解約ルールを整える
- 広告やホームページの表現をチェックする
開業日までに残る届出・設備・広告・契約の項目を洗い出したい場合は、コミッターズへご相談ください。優先順位をつけて、必要な相談につなげます。開業前に確認する順番と専門家への相談事項を一緒に整理します。
合わせて読みたい:風営法の許可と届出を比べる:接待のある店・ない店
まとめ
サロンの開業では、施術の内容によって、美容所の手続き、エステ特有の契約ルール、広告規制と、気をつける点が変わります。物件の契約や内装工事の前に、保健所へ相談するところから始めましょう。



