勤怠のデジタル化:労働時間の客観的把握のコツ

目次

  1. 労働時間の把握は義務です
  2. 客観的な記録とは何か
  3. 導入前に決める5つのルール
  4. 打刻と実態がずれるときの対処
  5. 導入後の運用と記録の保存
  6. 現場に定着させるコツ
  7. まとめ

「タイムカードを廃止して、勤怠システムを入れたい」「手書きの出勤簿の集計が、毎月の負担になっている」。勤怠管理のデジタル化は、小さな会社でも関心が高いテーマです。ところが、システムを入れてみたものの、打刻漏れや修正の山で、かえって手間が増えたという話も珍しくありません。

原因の多くは、道具の問題ではなく、運用ルールが決まっていないことです。この記事では、労働時間を客観的に把握するための考え方と、システム導入の前に決めておきたいルールを整理します。

労働時間の把握は義務です

従業員の労働時間を把握することは、会社の責任です。労働基準法で残業代を正しく計算するためだけでなく、労働安全衛生法でも、従業員の健康を守るために「労働時間の状況」を把握することが求められています。

長時間労働の従業員に対して医師の面接指導を行うかどうかを判断するときも、この記録が基になります。そのため、管理職や、実際の労働時間にかかわらず一定の時間働いたとみなす制度の対象者についても、健康管理の観点から時間の把握が必要です。

つまり、勤怠の記録は「給与計算の材料」であると同時に、「従業員の健康を守る材料」でもあります。

客観的な記録とは何か

厚生労働省は、労働時間を把握するための考え方を、ガイドラインで示しています。基本となるのは次の二つです。

  • 会社の担当者が、従業員の始業と終業の時刻を、自分の目で確認する
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録をもとに確認する

従業員本人が申告する「自己申告制」は、やむを得ない場合に限って使う方法です。その場合は、本人や管理者へ適正な申告をするよう説明し、申告と実際の状況がずれていないかを、必要に応じて調べることが求められます。

勤怠システムは、この「客観的な記録」を取る有力な手段です。ただし、システムを入れること自体が目的ではありません。打刻された時刻が、実際の労働時間を反映しているかが問われます。

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導入前に決める5つのルール

システムを選ぶ前に、会社として次のルールを決めておくと、導入後の混乱が減ります。

  • 始業・終業の定義:着替えや朝礼、清掃、終業後の片づけは労働時間に当たる場合があります。どこからどこまでを労働時間とするかを、はっきりさせます。
  • 打刻の方法:出社、直行直帰、テレワークのときにどう打刻するか。スマートフォンを使う場合は、場所の扱いも決めます。
  • 残業の申請と承認:事前に申請して承認する形にするか、事後報告にするか。承認しない残業が発生したときの扱いも決めます。
  • 打刻の修正手順:打刻漏れが起きたとき、誰が、どんな記録を残して修正するかを決めます。
  • 端数の処理:労働時間は、原則として1分単位で計算します。毎日の打刻を切り捨てる運用は、問題になる可能性があります。

これらを就業規則や運用マニュアルに書いておくと、従業員にも分かりやすくなります。

あわせて、休憩時間の扱いも決めておきましょう。休憩は、仕事から完全に離れて自由に過ごせる時間でなければなりません。電話番や来客対応をしながらの昼休みは、休憩とは認められない可能性があります。システムで休憩の開始と終了を打刻する方式にするか、一定の時間を自動で差し引く方式にするかで、実態とのずれの出やすさも変わります。自動で差し引く場合は、実際に休憩が取れているかの確認が欠かせません。

打刻と実態がずれるときの対処

よくあるのが、「打刻は定時なのに、実際はその後も働いていた」というずれです。上司に遠慮して先に退勤を打刻したり、持ち帰り仕事をしたりするケースがあります。

このずれを放置すると、未払い残業代の問題につながるだけでなく、長時間労働の発見も遅れます。次の点を意識しましょう。

  • システムの記録と、入退室の記録やパソコンの使用記録を、ときどき見比べる
  • 残業の事前申請と、実績に大きな差がないかを確認する
  • 「サービス残業を求めない」という会社の方針を、はっきり伝える
  • 持ち帰り仕事やチャットの返信も、労働時間になりうることを共有する

実態とのずれが見つかったら、本人を責めるのではなく、業務量や人員配置の見直しにつなげましょう。

導入後の運用と記録の保存

システムを入れたあとは、記録を決まった形で見直し、保存する運用が大切です。

  • 月次の確認:月末に、打刻漏れ、休憩時間、時間外労働の合計を点検します。
  • 長時間労働の把握:時間外・休日労働が多い従業員を、早めに見つけて面談につなげます。
  • 記録の保存:賃金台帳や出勤簿などの記録の保存期間は5年です。ただし、当分の間は3年とする経過措置があります。

勤怠の記録には、個人の働き方や健康に関する情報も含まれます。誰が閲覧できるかの権限を決め、パスワードやアクセス管理を適切に行ってください。

テレワークの従業員が多い会社では、パソコンのログイン・ログアウトの記録を活用する方法もあります。ただし、ログインしたまま席を離れていた時間は労働時間ではないため、記録をそのまま使うのではなく、日報や業務報告と組み合わせて確かめると精度が上がります。

現場に定着させるコツ

新しい仕組みは、現場に受け入れられて初めて機能します。

まず、導入の目的を伝えましょう。「監視のため」ではなく、「残業代を正しく払うため」「健康を守るため」「集計の手間を減らすため」と説明すると、理解が得られやすくなります。また、最初の1〜2か月は試行期間として、打刻のやり方に慣れる時間を設けるのも一案です。

管理者向けには、承認の手順や、月末の確認ポイントをまとめた短い資料を用意します。システムの提供会社のサポートも活用しながら、運用を少しずつ磨いていきましょう。

まとめ

勤怠のデジタル化で大切なのは、システム選びよりも先に、ルールを決めることです。始業・終業の定義、打刻の方法、残業の承認、修正の手順、端数処理の5つを固めておけば、導入後の混乱は大きく減ります。

そして、打刻の記録と実際の働き方がずれていないかを、定期的に確かめる習慣をつけましょう。それが、未払い残業のリスクを減らし、従業員の健康を守ることにもつながります。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は社会保険労務士(社労士)に確認してください。

勤怠のデジタル化の図解:労働時間の客観的な記録の取り方
勤怠システム導入前に決める5つのルールの図解

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