秘密保持契約(NDA)の確認ポイント:一方向型と双方向型で見る場所が違う

目次
1. NDAは「秘密を守る約束」
2. 比較表で見る一方向型と双方向型
3. 確認1:秘密情報の範囲
4. 確認2:いつまで守るのか
5. 確認3:秘密にならない「例外」
6. 見落としがちな周辺の条項
7. ひな形を使うときの進め方
8. まとめ
9. 合わせて読みたい

新しい取引先との商談で、「まずNDAを結びましょう」と言われた。送られてきた書類は、数ページのひな形。ネットで拾えるものと似ているし、こんなものかと思って、そのまま署名してしまった。そんな経験はありませんか。NDA(秘密保持契約)は、いちばん身近な契約の一つですが、中身を確かめずに結ぶと、思わぬ形で自分の首を絞めることがあります。しかもNDAには、一方だけが情報を出す一方向型と、双方が出し合う双方向型があり、型によって見るべき負担が変わります。この記事では、2つの型を比較表で並べたうえで、ひな形に判を押す前に見ておきたいポイントを、やさしく整理します。

NDAは「秘密を守る約束」

NDAとは、商談や共同作業の中で相手に伝える情報について、「外にもらさない」「決められた目的以外には使わない」と約束する契約です。たとえば、新しいサービスの企画、取引先のリスト、価格の計算方法、システムの仕様などが、その対象になります。

大切なのは、NDAが自分を守る契約であると同時に、自分を縛る契約でもあるという点です。自社が情報を出す側なら、相手に守ってもらうための約束になります。一方で、相手の情報を受け取る側にもなれば、同じ約束を自社が守らなければなりません。双方が情報を出し合う商談では、どちらの立場も同時に背負います。ひな形がどちらの立場に有利に作られているかを、まず意識しておきましょう。

比較表で見る一方向型と双方向型

まずは全体像を表で比べます。

比較項目一方向型双方向型
開示の向き一方だけが情報を出し、相手が守る双方が情報を出し合い、双方が守る
向いている場面情報の提供が片側に偏る商談や委託共同開発や提携など、双方が情報を出す商談
開示範囲の決め方出す側の情報を中心に定義する双方の情報を対象に定義し、出す側と受け取る側の両方で読む
期間の考え方受け取る側の負担が片側に寄るため、契約終了後の期間を特に確認する双方に負担が生じるため、双方の実態に合う期間か確認する
残存条項の考え方契約が終わったあとも守る義務が残る定めがあるか、対象と期間を確認する同じく残る義務の対象と期間を双方分確認し、片側だけ重くならないか見る
例外の確認受け取る側の既保有・独自開発を守る例外が要る双方の既保有・独自開発を守る例外が要る

どちらの型でも、範囲・期間・例外の3つを確認する基本は変わりません。型の違いは、「自社がどちらの立場で、どこまで縛られるか」を読み解く手がかりになります。

確認1:秘密情報の範囲

最初に見るのは、「秘密情報」がどこまでを指しているかです。広すぎても、狭すぎても困ります。

  • 「開示された一切の情報」のように広く書かれていると、受け取る側の負担が大きくなる
  • 「秘密と明示した文書」だけに限定されていると、口頭で伝えた内容は守られない可能性がある

たとえば、会議で口頭の説明をしたとき、あとから「それは秘密だったのか」と争いになることがあります。そこで、口頭で伝えた情報は、あとから書面やメールで秘密であると知らせるという運用を決めておくと、トラブルを防げます。逆に、受け取る側の立場なら、「何が秘密なのか」が曖昧なままだと、うっかり守る義務に違反してしまうおそれがあります。

また、法律上の「営業秘密」として守られるには、秘密として管理されていることなどの条件があります。契約と日々の管理は、セットで考えましょう。

確認2:いつまで守るのか

次に確認するのは、期間です。実は、NDAには2種類の期間があります。

  • 契約そのものが有効な期間(商談や取引を行う間)
  • 契約が終わったあとも、秘密を守り続ける期間

見落としがちなのは後者です。「契約終了後も3年間」のように期限が決まっているものもあれば、「期間の定めなし」で、実質的に永久に守り続ける形のものもあります。自社が情報を受け取る側だと、期間が長いほど守る負担が続きます。反対に、出す側であれば、短すぎると、期間が過ぎたあとに情報を自由に使われてしまいます。

守るべき情報の性格によって、ふさわしい期間は変わります。数年で古くなる情報なら年数を区切り、会社の根幹にかかわる情報なら長めに設定する、といった考え方があります。期間が自社の実態に合っているか、確認してください。

たとえば、新規事業のアイデアを共有する商談なら、市場に出るまでの期間を想定して年数を決める、という発想もあります。「とりあえず5年」のように、根拠なく決めてしまうのは避けたいところです。また、自動更新の条項があるときは、いつ・どのように終了できるのかも、あわせて見ておきましょう。

確認3:秘密にならない「例外」

3つめは、例外の条項です。一般的に、次のような情報は、秘密情報から除かれることが多いです。

  • すでに世の中に公開されている情報
  • 受け取る前から、自社が持っていた情報
  • 相手の情報を使わずに、自社が独自に作った情報
  • 第三者から、正当な形で入手した情報

この例外が書かれていないと、受け取る側は大きな不利益を負うことがあります。たとえば、自社がもともと開発していた技術について、あとから「相手から教わった秘密情報だ」と主張されるおそれがあります。例外の条項は、自社の既存の事業を守る盾になります。

また、裁判所の命令や法令にもとづいて開示を求められた場合は、例外として認められるのが一般的です。ただし、その場合でも、先に相手へ知らせる義務があるかどうかは、契約書ごとに違うので、読み込んでおきましょう。

見落としがちな周辺の条項

3つの確認に加えて、次の点にも目を通しておくと安心です。

  • 目的外使用の禁止:商談の目的以外に、情報を使ってよいのか。
  • 複製や社内での共有範囲:誰まで見てよいのか。外部の専門家(弁護士、税理士、システム会社など)に相談できるのか。
  • 返却・廃棄:契約が終わったとき、資料を返すのか、消すのか。データのバックアップは、どう扱うのか。
  • 違反した場合の責任:損害賠償や、違約金の定めがあるか。

とくに、外部の専門家への相談が禁じられていると、「NDAを理由に、契約書の内容すら弁護士に見せられない」ということになりかねません。専門家への開示が認められているか、チェックしておきましょう。

もう一つ、実務で多いのが、メールやチャットでの情報のやりとりです。契約を結ぶ前に、気軽に資料を送ってしまう場面があります。NDAによっては、結んだ日より前に渡した情報が対象に入っていないことがあります。署名より前に渡した資料が守られるかどうかも、確認しておくと安心です。署名前に重要な資料を送るのは、控えるのが無難です。

ひな形を使うときの進め方

最後に、実際の進め方です。まず、ひな形をそのまま使わず、自社の取引の実態に合わせて修正することが基本です。そして、相手から送られてきた書類にも、修正を申し出る権利があります。「先方のひな形だから」と遠慮する必要はありません。

署名の前に、社内でも共有範囲を決めておきましょう。担当者だけがNDAの内容を知っていて、同僚や外注先が気軽に資料を転送してしまう、という事態は珍しくありません。契約を結んだら、「誰が、どの情報を、どこまで扱えるか」を簡単なメモにして、関係者に伝えておくと、うっかり違反を防げます。

修正をお願いするときは、「ここが広すぎるので、このように限定したい」と、具体的な理由と案を添えると話がまとまりやすくなります。判断に迷う場合や、取引の規模が大きい場合は、署名の前に弁護士へ相談しておくと安心です。どの進め方が自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

まとめ

NDAは、一方向型か双方向型かで自社の立場と負担が変わります。そのうえで、ひな形をそのまま結ぶのではなく、範囲・期間・例外の3つを確かめてから判を押す契約です。秘密情報が何を指すのか、いつまで守り続けるのか、どんな情報が例外になるのかを押さえるだけで、リスクは大きく減ります。立場が情報を出す側か受け取る側かによって、有利不利は変わります。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(弁護士)に確認してください。

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