営業許可と届出を比べる:飲食店の手続きと深夜酒類提供

物件を借りて、内装を決めて、メニューを考える。飲食店の開業準備は楽しい作業ですが、その裏で「許可」と「届出」の順番を間違えると、オープン日が数週間ずれることがあります。しかも窓口は、保健所、消防署、警察署と、一つではありません。この記事では、営業許可が要る形、届出で済む形、深夜に酒類を出す店の届出を比較表で並べ、飲食店を開く前に押さえておきたい許可・防火・深夜営業の届出を、時間の流れに沿って整理します。

窓口は3つに分かれる

飲食店の開業では、主に次の3か所とのやり取りが生じます。

  • 保健所:食品衛生法に基づく営業許可
  • 消防署:防火管理者の選任や、防火対象物の使用開始の届出
  • 警察署:深夜に酒類を提供する場合の届出

それぞれ根拠となる法律も、締め切りも違います。まずは全体像をつかんでから、物件を決めるのがおすすめです。物件を契約したあとで「この建物では許可が取りにくい」と分かると、取り返しがつきません。

比較表で見る飲食店の手続き

まずは、飲食店まわりの主な手続きを表で比べます。

比較項目営業許可(飲食店営業)届出で済む形深夜酒類提供の届出
窓口保健所保健所(営業届出)・消防署(使用開始届)など、手続きごとに異なる警察署を通じて公安委員会
どんな店・形か飲食店として調理して出す形。許可が必要な業種許可の対象でない営業の届出や、防火対象物の使用開始など、届出で足りる手続き深夜(午前0時から午前6時まで)に、酒類を主として提供する飲食店
事前の確認施設の基準があり、内装工事の前に図面で事前相談し、施設検査を受ける手続きごとに要件が異なり、期限までに届け出る営業できる場所に制限がある地域もあり、物件を決める前の確認が大切
期限の目安工事完了後に検査を受け、許可を受けてから営業する消防の使用開始届は使用開始の7日前までが目安営業を始めようとする10日前まで
注意点食品衛生責任者の配置も必要許可ではなくても、遅れると開店に間に合わない接待をともなう営業は、風営法の風俗営業の許可が必要になることがある
営業許可と届出の比較

比べると分かるように、飲食店の中心は保健所の営業許可で、届出は「許可の代わり」ではなく、営業の形や建物の使い方に応じて重なる手続きです。深夜に酒類を出す店は、営業許可に加えて警察署への届出がもう一つ必要になります。

保健所の営業許可が基本

飲食店を営業するには、保健所の営業許可が必要です。食品衛生法は2021年6月1日に改正され、許可の対象となる業種の整理や、届出制度の創設が行われています。飲食店は引き続き、許可が必要な業種です。

許可の前提になるのが、施設の基準です。たとえば、従事者の手指を洗う流水式の手洗い設備や、汚れが再び付かない構造の水栓などが求められています。そのため、内装工事に入る前に、図面を持って保健所に相談しておく進め方が一般的です。工事が終わってから「基準を満たしていなかった」と分かると、やり直しの費用がかかります。

もう一つ、食品衛生責任者の配置も必要です。原則として、許可や届出の対象となる施設に、食品衛生責任者を定める決まりがあります。調理師などの資格がある人か、養成講習会を受けた人が担当するのが一般的です。

HACCPの考え方も欠かせない

2021年6月1日からは、原則としてすべての食品等事業者に、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が求められています。HACCPとは、食中毒などの危険が起きやすい工程を洗い出し、そこを重点的に管理する考え方です。

難しく聞こえますが、小さな飲食店なら、業種別の手引書を使って「温度の記録」「手洗いの確認」「器具の洗浄」といった日々の確認事項を、決まった形で記録する運用になります。許可の申請とは別に、開店後の毎日の習慣として準備しておく必要があります。

営業許可の申請は、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」でオンラインでもできます。

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消防署への手続きを忘れない

保健所と並んで見落としやすいのが、消防署の手続きです。新しい建物や既存の建物を飲食店などの用途で使い始めるときは、防火対象物使用開始届を出します。自治体の案内では、使用開始の7日前までとされています(地域によって扱いが異なるため、管轄の消防署で確認してください)。

また、建物の大きさや用途によっては、防火管理者を選び、消防計画を作る必要があります。飲食店では、収容人員が30人以上になると必要になります。防火管理者になるには講習を受ける必要があり、日程が決まっているため、早めの申し込みが安心です。

火を使う厨房や、客席の避難経路、消火器の設置など、防火の面では内装工事の設計にも影響が出ます。工事を始める前に、消防署に相談する進め方が望ましいでしょう。

店舗の内装工事、手順と契約前に確かめる点は、ニコニコデスクの『店舗の内装工事、手順と契約前に確かめる点』でも紹介しましたが、工事の前に消防署へ相談する進め方とあわせて読むと、段取りがつかみやすくなります。

深夜に酒類を出すなら警察署へ

夜遅くまでお酒を出す店には、もう一つの手続きがあります。深夜(午前0時から午前6時まで)に、酒類を主として提供する飲食店を営む場合は、深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。

警察の案内では、営業を始めようとする10日前までに、営業開始届出書を、営業所を管轄する警察署を通じて公安委員会に出します。許可ではなく届出ですが、遅れると開店に間に合いません。また、営業できる場所に制限がある地域もあるため、物件を決める前の確認が大切です。

注意したいのは、接待をともなう営業は別の扱いになることです。お客さんの隣に座って会話をするなど、接待にあたる行為がある場合は、風営法上の「風俗営業」の許可が必要になることがあります。「バーだから届出でよい」と決めつけず、お店の運営の中身で判断します。

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開業までの順番を整理する

ここまでを、時間の順に並べるとこうなります。

  • 物件を契約する前に、保健所・消防署・警察署へ、その物件で営業できるかを確認する
  • 図面ができたら、内装工事の前に、保健所へ事前相談する
  • 食品衛生責任者を決め、防火管理者が必要なら講習を申し込む
  • 工事が終わったら、保健所の施設検査を受け、営業許可を受ける
  • 営業開始の7日前を目安に、消防署へ使用開始の届出を出す
  • 深夜に酒類を出すなら、営業開始の10日前までに警察署へ届出を出す

日程がかさなると、どこかが遅れて全体に響きます。一番長くかかるものから逆算して予定を組むのがコツです。

物件選びで見ておきたいこと

手続きの多くは、物件の条件で難しさが変わります。内見のときに、次のような点を確認しておくと、あとの手戻りが減ります。

  • 前の入居者が飲食店だったか:厨房の設備や排水の設備が残っている場合は、改装の負担が軽くなることがあります
  • 給排水・換気・ガスの容量:希望のメニューに必要な設備が使えるか
  • 避難経路と出入口:消防の面で、客席の配置に制約が出ないか
  • 賃貸契約の使用目的:飲食店としての使用が、貸主に認められているか

とくに賃貸の場合は、貸主の承諾が必要な工事もあります。契約書の条文や、退去時の原状回復の範囲は、あとで揉めやすい部分です。気になる点は、契約前に書面で確認しておきましょう。

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店舗を借りる手順は、ニコニコデスクの『店舗を借りる手順は?契約前に確認する6つの点』でも紹介しましたが、契約の前に書面で確認する点を整理しておくと、あとの手戻りが減ります。

開店後に続く手続き

許可を取ったら終わり、ではありません。開店後も次のようなことが続きます。

  • メニューや営業時間の変更、店舗の改装があるとき、変更の届出や再度の相談が必要になる場合があります
  • 営業許可は有効期間があり、更新の手続きが必要です(期間は自治体ごとの運用で確認します)
  • 食品衛生責任者や防火管理者が退職したときは、交代の手続きが必要です
  • 従業員を雇う場合は、労働保険や社会保険の手続きも出てきます

開店前の準備に目が向きがちですが、許可証は取ったあとも管理が必要です。許可証の控えと、更新時期、責任者の名前を一枚にまとめて、店の事務所に置いておくと安心です。

行政書士に頼める部分

営業許可の申請書類の作成や、図面の整理、保健所・消防署・警察署への提出は、行政書士が扱う分野です。窓口が複数あるため、開業の初めに全体の段取りを相談するのも一つの方法です。

ただし、店の設計、内装、保健所の検査での指摘に対する工事の内容は、施工会社や設計者と調整する範囲です。誰が何を担当するのかを、最初に整理しておくと混乱しません。報酬は依頼の範囲によって変わるため、見積もりの内訳を確認してください。どの進め方が自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

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まとめ

飲食店の開業では、保健所の営業許可、消防署の使用開始届と防火管理、警察署の深夜酒類提供の届出という3つの窓口があります。許可と届出は役割が違い、営業の形によって必要な組み合わせが変わります。順番は、物件の契約前に確認し、内装工事の前に事前相談をして、開店の前に届出を済ませる流れです。許可と届出は、それぞれの期限から逆算して動けば、慌てずに済みます。

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3つの窓口と役割

制度の使い分けや手続きの段取りで迷う場合は、専門家への相談が近道です。SAMURAI TIMESの相談窓口(コミッターズ)でも、経営の困りごとの相談を受け付けています。