全部事項証明書と現在事項証明書と閉鎖事項証明書を比べる:登記事項証明書に載る範囲の違い

全部事項証明書と現在事項証明書と閉鎖事項証明書を比べる:登記事項証明書に載る範囲の違い

目次

  1. 登記簿謄本は、いまは「登記事項証明書」
  2. 3つの証明書を比べる
  3. まず見る:商号と本店
  4. 次に見る:事業の目的
  5. 役員欄で「誰が決める会社か」を知る
  6. 変化のサインを読む
  7. 登記簿では分からないこと
  8. 取引前チェックの進め方
  9. 取得のしかたと、司法書士の使い道
  10. まとめ
  11. 合わせて読みたい

新しい取引先と契約する前、「この会社、ちゃんと実在するのかな」「社長は本当にこの人?」と不安になることはありませんか。そんなとき、誰でも取れる強い味方が、法務局の登記です。会社の基本情報が公的な記録として残っていて、手数料を払えば誰でも内容を確認できます。この記事では、取引先のチェックに使える登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)の見方を、証明書の種類の違いから、はじめての方にも分かるように整理します。

登記簿謄本は、いまは「登記事項証明書」

「登記簿謄本」は昔の呼び名で、いまは「登記事項証明書」と呼ばれます。商業登記法10条は、何人も、手数料を納付して、登記簿に記録されている事項を証明した書面の交付を請求できると定めています。つまり、取引相手の許可がなくても、第三者として確認できるということです。

証明書には、主に次の種類があります。

  • 履歴事項全部証明書:現在の内容に加え、一定期間の変更の履歴まで載る。取引先チェックで最もよく使う
  • 現在事項全部証明書:現在の内容だけが載る
  • 閉鎖事項全部証明書:本店移転などで閉鎖された記録を見るときに使う

迷ったら、履歴事項全部証明書を取ればまず困りません。手数料は請求方法によって異なるため、法務局のページで確認してください。

3つの証明書を比べる

まずは全体像を表で比べます。会社の登記の場合は、全部事項証明書は「履歴事項全部証明書」、現在事項証明書は「現在事項全部証明書」、閉鎖事項証明書は「閉鎖事項全部証明書」と呼ばれます。違いは、載っている範囲です。

比較項目 全部事項証明書 現在事項証明書 閉鎖事項証明書
載っている範囲 現在の内容に加え、一定期間の変更の履歴まで載る 現在の内容だけが載る 本店移転などで閉鎖された記録が載る
見られること 商号・本店・目的・役員などの現在と、変更の流れ いまの商号・本店・目的・役員などの現在の状態 閉鎖される前の古い記録
向いている場面 取引先チェックで、変化のサインまで読みたいとき 現在の状態だけを手早く確かめたいとき 閉鎖された記録そのものを見るとき
注意点 載る履歴には一定期間の区切りがある 過去の変更は載らないため、変化の流れは読めない 現在の会社の状態を示すものではない
登記事項証明書の種類の比較:全部事項・現在事項・閉鎖事項、載っている範囲の違い

まず見る:商号と本店

最初に確認したいのは、契約書に書く相手の情報と、登記が一致しているかです。

  • 商号(会社名):「株式会社」の位置や、漢字・カナの表記まで一致しているか
  • 本店:契約書や請求書の住所と、登記上の住所が合っているか
  • 会社成立の年月日:創業の古さ、設立から間もないかどうか

契約書に誤った会社名や古い住所を書いてしまうと、あとで「契約の相手は誰だったのか」が曖昧になるおそれがあります。契約書の表記は、登記の記載をそのまま写すのが基本です。

次に見る:事業の目的

「目的」の欄は、その会社が行う事業の範囲を示す部分です。ここで見るのは、次の点です。

  • 取引しようとしている内容が、目的に含まれているか
  • 目的が極端に多い、またはまとまりがない場合は、事業の実態も確認してみる
  • 許認可が必要な事業なら、目的に書かれているだけでなく、実際に許可を持っているかを別途確認する

目的に書かれていても、事業を実際に行っているとは限りません。「書いてある」ことと「やっている」ことは別だと覚えておくと安心です。

役員欄で「誰が決める会社か」を知る

役員に関する事項は、取引先チェックの核心です。

  • 代表取締役:契約書に押印・署名できる人(代表権のある人)が誰か
  • 取締役・監査役:会社の意思決定に関わる人たち
  • 就任・重任・退任の日付:役員が頻繁に入れ替わっていないか

たとえば、契約書に署名する相手が、登記上の代表取締役ではなかった場合、その人に契約をする権限があるのかを確認する必要があります。契約の相手方が代表者かどうかは、登記ですぐに確かめられます。

なお、代表者の住所は、一定の条件で登記簿に出さない取り扱いが認められる場合があるため、記載がないだけで不審とは限りません。

変化のサインを読む

履歴事項全部証明書では、過去の変更が時系列で並びます。そこに、会社の「動き」が表れます。

  • 本店が短期間に何度も移転していないか
  • 商号や目的が頻繁に変わっていないか
  • 役員の入れ替わりが激しくないか
  • 資本金が急に変わっていないか

もちろん、これらが直ちに悪いサインとは限りません。事業の拡大や再編で、自然に変わることもあります。ただ、変化が多い場合は、理由を聞いてみるだけで、相手の説明の誠実さが分かることがあります。

また、会社法915条により、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をするルールです。登記が最新でない会社は、管理がゆるい可能性もあります。

登記簿では分からないこと

便利な登記事項証明書にも、限界があります。

  • 会社の売上や利益などの業績は載らない
  • 取引先への支払い能力や、実際の信用度は載らない
  • 登記は申請に基づくので、実態が最新とは限らない

たとえば、長期間まったく登記がない会社は、休眠会社として扱われ、みなし解散の対象になることがあります(会社法472条)。ただ、登記が古いだけで、何もしていないとは断定できません。

そのため、登記は「会社の骨格」を確認するツールと考えましょう。信用調査会社のレポートや、決算書、取引実績、実際の訪問や面談などと組み合わせて判断するのが現実的です。

取引前チェックの進め方

実際の確認は、難しく考えず、次の順番で進めるとスムーズです。

  • 相手から、正式な会社名・住所・代表者名を聞いておく
  • 履歴事項全部証明書を取り、聞いた情報と登記を照らし合わせる
  • 食い違いがあれば、理由を確認する(引っ越しや改名の直後など、単純な更新漏れのこともある)
  • 大きな取引や長期契約では、更新のタイミングでも取り直す

ちなみに、証明書そのものではなく、内容を手軽に見たいだけなら、オンラインで登記情報を閲覧できる「登記情報提供サービス」もあります。ただし、契約や融資の提出書類には、法務局が発行する登記事項証明書が求められるのが一般的です。用途に合わせて使い分けましょう。

取得のしかたと、司法書士の使い道

登記事項証明書は、法務局の窓口や郵送、オンラインで請求できます。法人番号や会社法人等番号が分かれば、手続きがスムーズです。

司法書士は、会社の登記の申請を代理する専門家です。取引先の登記の読み方に迷ったとき、また自社の登記が最新になっているか確認したいときは、相談先になります。自社の登記が古いと、取引先からの信用にも響くため、役員の変更や本店移転の登記を、期限内にきちんと行っておきましょう。どの進め方が自社に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

取引先を見きわめるコツは、コミッターズが扱う営業のテーマとも通じています。

まとめ

比べる出発点は、載っている範囲です。取引先の変化まで読みたいなら全部事項証明書(履歴事項全部証明書)、現在の状態だけでよければ現在事項証明書、閉鎖された記録は閉鎖事項証明書、と使い分けます。登記事項証明書は、商号・本店・目的・役員を見るだけで、取引先の基本情報を手軽に確認できる、公的な「名刺」のようなものです。契約書に書く名前や住所は登記と一致させ、代表者の権限も確かめましょう。ただし、業績や信用までは分からないため、ほかの情報と組み合わせることが大切です。

個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。

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