目次
- 「目的」は定款と登記簿に書かれています
- 目的を変更する手続き
- 許認可との関係が最も大事です
- 書き方のポイント
- 目的を追加しないとどうなる?
- ほかの定款変更もまとめて見直す
- まとめ
「新しい事業を始めたい。でも、会社の登記簿に書いていない事業をやっても大丈夫?」。事業を広げようとする経営者から、よく出る質問です。会社の登記簿には、「目的」という欄があり、その会社が行う事業が書かれています。新規事業を始めるときは、この目的を追加するかどうかを、早めに決めておく必要があります。この記事では、目的の変更に必要な手続きと費用、許認可との関係、書き方の考え方を整理します。
「目的」は定款と登記簿に書かれています
会社の「目的」とは、その会社が行う事業の内容です。定款(会社のルールブック)に必ず書く事項で、同時に登記簿にも載ります。取引先や金融機関、役所が会社の事業を確認するとき、この欄を見ることがよくあります。
目的には、現在行っている事業のほか、将来行う予定の事業を書いておくこともできます。ただ、あまり関係のない事業を並べすぎると、何をしている会社なのか、見る人に伝わりにくくなります。事業の実態と合った内容にすることが基本です。
もう一つ意識したいのが、登記が公開情報であることです。目的を追加すれば、その内容は、誰でも取得できる登記事項証明書に載ります。新規事業の計画を、取引先や競合に知られたくない時期は、登記のタイミングも含めて、公開のされ方を考えておきましょう。
目的を変更する手続き
目的を追加したり変更したりするには、定款を変更します。手続きの流れは次のとおりです。
- 変更する内容を決める:追加する事業の文言を考えます。
- 株主総会で決議する:定款の変更は、株主総会の特別決議が必要です(会社法466条・309条)。特別決議は、出席した株主の3分の2以上の賛成で成立する、重めの決議です。
- 議事録を作る:総会の内容を、議事録として残します。
- 変更登記を申請する:目的は登記事項のため、変更から2週間以内に、法務局へ申請します(会社法915条)。
登記にかかる登録免許税(登記のときに納める税金)は、3万円です(登録免許税法・別表第一)。株主が社長一人だけの会社でも、総会の決議と議事録は必要になります。実際には、株主全員が集まって開く形式でなくても、株主全員が書面で同意する方法(書面決議)でまとめることもできます。いずれにしても、決議したことを示す書面を、必ず残すことが登記の前提です。
許認可との関係が最も大事です
新規事業で最も注意したいのが、許認可との関係です。業種によっては、事業を始める前に、役所の許可や登録が必要です。たとえば、中古品の売買、建設工事、不動産の取引、人材の紹介などが挙げられます。
こうした許認可の審査では、会社の目的に、その事業が書かれているかを確認されるのが一般的です。目的に書かれていないと、そもそも申請が受け付けられなかったり、先に目的の追加を求められたりすることがあります。
ここで大切なのは順番です。
- 目的の変更登記を先に済ませる
- そのうえで、許認可の申請をする
申請先の窓口が決めている文言や、確認の方法は、役所ごとに異なります。申請先で必要な書き方を、事前に確認してから目的を決めると、やり直しを防げます。
また、目的の変更登記が終わってから、許認可の申請書に添付する登記事項証明書を取り直す必要が出ることもあります。登記が完了するまでの日数は、法務局の混み具合で変わります。許認可の開業予定日から逆算して、登記の準備を始めておくと、予定がずれにくくなります。
合わせて読みたい:会社を作ったあとに:業種別の許認可チェックリスト
エネルギー分野などで新規事業を始める際の許認可の考え方は、ENERGY BANKでも取り上げています。
書き方のポイント
目的の文言は、次の点を意識して作ります。
- 適法であること:法律に反する事業は書けません。
- 営利性があること:会社は利益を目的とする組織のため、営利目的の事業を書きます。
- 意味が伝わること:登記官や取引先が読んで、内容が分かる表現にします。
- 許認可の要件に合うこと:役所が求める文言があれば、それに合わせます。
多くの会社では、最後に「前各号に付帯関連する一切の業務」という一文を加えます。これで、関連する周辺の業務をカバーしやすくなります。
イメージしやすいよう、書き方の例を挙げます。
- インターネットを利用した各種情報提供サービス
- 前号に関する企画、制作、運営及び販売
- 前各号に付帯関連する一切の業務
最初に主力の事業を置き、あとに関連する事業を続けるのが読みやすい並べ方です。実際の文言は、事業の中身と、許認可の窓口が求める書き方に合わせて調整してください。
目的を追加しないとどうなる?
「目的に書いていない事業を、少しだけ試してみたい」と考える人もいます。一般に、登記簿に書いていない事業を行ったからといって、すぐに違法になるわけではありません。
それでも、次のような困りごとが出やすくなります。
- 金融機関の融資審査で、目的に書かれていない事業は、説明が求められる
- 取引先から、事業内容の確認を求められる
- 許認可の申請ができない、または止まる
- 目的の範囲を超える行為かどうかで、争いになるおそれがある
小さく始める場合でも、本格的に事業にするなら、目的の追加を先に済ませておくほうが安心です。
ほかの定款変更もまとめて見直す
目的の追加をきっかけに、定款全体を見直すのも一案です。
- 商号(社名)を変える場合
- 本店の所在地の書き方
- 役員の任期や、株式の譲渡制限の定め
- 事業年度や公告の方法
ただし、定款を変えれば必ず登記が必要になるわけではありません。登記事項にあたる変更だけが、登記の対象です。何が登記事項にあたるかは、変更の内容ごとに違うため、判断に迷う場合は専門家に確認してください。たとえば、目的や商号の変更は登記が必要ですが、会社の内部ルールだけを定めた条項の変更なら、登記は不要という場合もあります。
まとめ
新規事業を始めるときは、会社の目的に、その事業が含まれているかを確認しましょう。目的の変更には、株主総会の特別決議と、変更から2週間以内の登記が必要で、登録免許税は3万円です。許認可が必要な事業では、先に目的を変更してから申請する流れが基本になります。申請先で求められる書き方を、事前に確認しておくと安心です。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。


