相続した土地の手放し方を比べる:相続放棄・国庫帰属・売却

相続した土地の手放し方を比べる:相続放棄・国庫帰属・売却

目次

  1. 使わない土地を手放す方法は3つある
  2. 手放し方を比べる
  3. 相続放棄:財産全体を引き継がない
  4. 相続土地国庫帰属制度:相続した土地だけを国へ
  5. 売却・寄付:買い手や受け入れ先を探す
  6. 国庫帰属が認められない土地
  7. 国庫帰属の手続きの流れ
  8. 「持ち続ける」コストと比べて考える
  9. 申請前に確認したい点と準備
  10. まとめ
  11. 合わせて読みたい

親から相続した山林や畑、遠方の空き地。使う予定もなく、売ろうにも買い手がつかないまま、毎年の固定資産税や草刈りの手間だけが残っている。そんな「負動産」に悩む方は少なくありません。手放し方には、相続放棄・相続土地国庫帰属制度・売却や寄付という選択肢がありますが、手放せる範囲も、進められるタイミングも、それぞれまったく違います。この記事では、3つの方法を比較表で並べ、利用の条件、費用の考え方、注意点を整理します。

使わない土地を手放す方法は3つある

大まかに分けると、手放し方は次の3つです。

  • 相続放棄:相続そのものを、家庭裁判所の手続きで初めからなかったことにする方法です。
  • 相続土地国庫帰属制度:相続した土地だけを、一定の条件のもとで国に引き取ってもらう方法です。2023年4月27日にスタートしました。
  • 売却・寄付:買い手を探して売る、隣地の所有者に譲る、自治体や団体へ寄付する方法です。

どれを選べるかは、「相続してからどれくらい経ったか」「ほかの財産も手放してよいか」「買い手がつきそうか」で決まります。

手放し方を比べる

まずは全体像を表で比べます。

比較項目 相続放棄 相続土地国庫帰属制度 売却・寄付
手放せる範囲 財産全体(土地だけは選べない) 相続した土地だけ 土地ごと(売る土地を選べる)
タイミング 相続から3か月以内が期限 相続したあと(相続登記が必要) いつでも進められる
手続き先 家庭裁判所 土地所在地を管轄する法務局 買い手・隣地所有者・自治体など
費用の考え方 手続きの費用がかかる 審査手数料と、承認後に負担金がかかる 売却なら代金を受け取れる。寄付は受け入れ条件次第
向いている場面 借金なども含め財産全体を引き継ぎたくない場合 ほかの財産は受け取りたいが、土地だけ手放したい場合 買い手や受け入れ先が見つかる場合
相続した土地の手放し方の比較:相続放棄・国庫帰属・売却

相続放棄:財産全体を引き継がない

相続放棄は、財産全体を放棄する手続きで、特定の土地だけを選べません。また、相続から3か月以内という期限があります。

「相続放棄」と混同されやすい点ですが、相続放棄はすべての財産を引き継がない手続きなのに対し、国庫帰属はすでに相続した土地だけを手放す手続きです。預貯金など他の財産は受け取りたいが土地だけは要らない、という場合には相続放棄は使えません。逆に、土地以外にも借金などの心配があり、財産全体を引き継ぎたくない場合は、期限内に相続放棄を検討します。

相続土地国庫帰属制度:相続した土地だけを国へ

相続(または遺言による相続人への遺贈)で土地を取得した人が、法務大臣に申請し、承認を受けたうえで負担金を納めると、その土地の所有権を国に引き渡せる制度です。窓口になるのは、土地の所在地を管轄する法務局です。

承認されて負担金を納めると、土地は国庫に帰属し、以後は国が国有財産として管理します。つまり、固定資産税の負担や、草木・建物の管理責任から解放されます。

対象になるのは、あくまで相続などで取得した土地です。自分で買った土地は、この制度では対象外です。また、共有の土地は、共有者全員で申請する必要があります。

売却・寄付:買い手や受け入れ先を探す

国庫帰属と並行して検討したいのが、民間の相手に手渡す方法です。

  • 売却する:買い手がつけば、いちばん収支が良くなります。
  • 隣地の所有者に譲る・買ってもらう:隣の人にとっては価値がある場合があります。
  • 自治体や団体への寄付:受け入れ条件は各自治体次第です。

どの方法が自分の土地に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

国庫帰属が認められない土地

法務省の案内では、通常の管理や処分に過分の費用や労力がかかる土地は、引き取ってもらえないとされています。具体的には、次のような土地が挙げられています。

  • 建物や、通常の管理を妨げる工作物がある土地
  • 土壌汚染や、地中の埋設物がある土地
  • 危険な崖があり、管理に過分の費用がかかる土地
  • 権利関係に争いがある土地
  • 担保権などが設定されている土地
  • 通路など、他人が使う土地

つまり、更地で、境界がはっきりしていて、争いがなく、危険もない土地が前提です。建物が建っている土地は、先に建物を取り壊す必要があります。

自分の土地が該当するか分からないときは、申請の前に、法務局で相談できます。

国庫帰属の手続きの流れ

国庫帰属を選ぶ場合、大まかな流れは次のとおりです。

  • 事前に相談する:対象になりそうか、法務局で相談する。
  • 承認申請:申請書と必要書類を提出し、審査手数料を納める。
  • 審査:法務局が書類の確認や、必要に応じて実地調査を行う。
  • 承認:要件を満たせば、承認の通知が届く。
  • 負担金の納付:通知後に負担金を納めると、国庫に帰属する。

費用は大きく2つあります。申請の際に納める審査手数料と、承認されたあとに納める負担金です。負担金は、土地の管理費用の10年分に相当する額として計算され、土地の種類や面積によって算定方法が分かれます。実際にいくらになるかは土地ごとに異なるため、事前に法務局や専門家に確認するのが確実です。

審査には時間がかかります。売却や活用の予定があるなら、並行して検討するくらいの気持ちでいると安心です。

「持ち続ける」コストと比べて考える

負担金を払ってまで手放すべきか、迷う方も多いはずです。判断するときは、持ち続けた場合の将来のコストと並べて比べてみてください。

  • 毎年の固定資産税や、草刈り・見回りにかかる費用と手間
  • 荒れた土地による、近隣とのトラブルの責任
  • 自分が亡くなったあと、子どもや孫にその土地を引き継がせる負担

とくに三つ目は見落とされがちです。使い道のない土地は、次の世代にとっても負担になります。いま自分の代で整理しておくことは、家族への負担を減らす備えとも言えます。一方で、近い将来に売れる見込みや、活用の予定があるなら、急いで手放す必要はありません。収支をざっくり書き出し、比べることをおすすめします。

申請前に確認したい点と準備

申請の前に、次の点をチェックしておくと、無駄足を減らせます。

  • 共有者がいないか(いる場合は全員で申請します)
  • 抵当権などの担保が付いていないか
  • 土地を誰かが使っていないか(貸している、通り道になっているなど)
  • 申請者本人が、相続などでその土地を取得した人か

これらは、登記事項証明書や現地の確認で、ある程度分かります。

スムーズに進めるために、次の準備もしておきましょう。

  • 名義を整える:土地の名義が亡くなった方のままなら、先に相続登記を済ませる。登記は2024年4月から義務化されています。
  • 土地の状況を確認する:現地の写真、境界の目印、建物や廃棄物の有無を確認する。
  • 隣地との関係を整理する:境界が曖昧なら、隣地所有者と確認しておく。

ここで司法書士が力になれるのが、相続登記と、承認申請の書類作成です。境界の確定が必要になる場合は、土地家屋調査士の役割になります。複数の専門家が関わることもあるため、最初に全体像を相談するのが近道です。

まとめ

比べる出発点は、手放せる範囲とタイミングです。相続放棄は財産全体が対象で相続から3か月以内という期限があり、国庫帰属は相続した土地だけを対象に、審査手数料と負担金を納めて国へ引き渡す方法、売却・寄付は相手が見つかれば進められる方法です。国庫帰属には更地であることや争いがないことなどの要件があるため、ほかの方法と比べたうえで、使えるかどうかを判断しましょう。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。

合わせて読みたい

国庫帰属の費用の目安は2種類:審査手数料と負担金

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です