自筆証書遺言と公正証書遺言を比べる:作り方と安心感

自筆証書遺言と公正証書遺言を比べる:作り方と安心感

目次

  1. 2つの方式を比べる
  2. 自筆証書遺言:手軽さと落とし穴
  3. 公正証書遺言:安心感と注意点
  4. 向いている人で選ぶ
  5. 書いたあとに見直すタイミング
  6. これから変わるかもしれない動き
  7. 司法書士に相談するタイミング
  8. まとめ

「うちは揉めるほどの財産はないから」と、遺言書を後回しにしていませんか。実は、揉めやすいのは財産が多い家よりも、財産のほとんどが自宅や事業用の不動産、自社株といった「分けにくいもの」である家です。遺言書は、そうした家族に最後の意思を届ける手段です。ただ、いざ書こうとすると「自分で書く自筆証書遺言」と「公証役場で作る公正証書遺言」のどちらにすべきか、迷います。この記事では、両者を表で比べて違いを押さえたうえで、選ぶときの軸を整理します。

2つの方式を比べる

遺言書にはいくつかの方式がありますが、実際によく使われるのは次の2つです。

  • 自筆証書遺言:本人が全文・日付・氏名を自分で書いて、押印する遺言です。紙とペンさえあれば作れます。ただし、財産の一覧(財産目録)はパソコンで作ったり、通帳のコピーを添えたりすることが認められています。
  • 公正証書遺言:公証人(法律の専門家として任命された公務員)が、本人から内容を聞き取って文書にまとめ、証人の立ち会いのもとで作る遺言です。原本は公証役場に残ります。

違いは「誰が、どう作るか」にあります。自分ひとりで完結できるのが自筆、専門家と一緒に作り込むのが公正証書、というイメージです。主な違いを表にまとめます。

比較項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作り方 本人が全文・日付・氏名を自書し、押印する。財産目録はパソコン作成や通帳のコピーの添付も認められる 公証人が本人から内容を聞き取って文書にまとめ、証人の立ち会いのもとで作る
保管 自宅で保管するのが基本。法務局に預ける制度も使える 原本は公証役場に残る
家庭裁判所の検認 法務局に預ける制度を使わない場合は必要 不要
書き直しやすさ いつでも自分で書き直せる 新しい公正証書遺言を作る手続きを踏む
向いている人 財産がシンプルで、まず気軽に意思を残したい人 不動産・自社株が中心で、家族関係に不安がある人
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較:作り方・保管・検認で比べる

自筆証書遺言:手軽さと落とし穴

自筆の最大の魅力は、手軽さと費用の安さです。いつでも、誰にも知られずに作れ、書き直しも自由です。

一方で、落とし穴もあります。

  • 書き方のルールを外すと、遺言そのものが無効になるおそれがあります(日付があいまい、押印がない、など)。
  • 内容があいまいだと、「この不動産は誰に?」という解釈をめぐって、かえって揉めることがあります。
  • 自宅で保管していると、見つからなかったり、書き換えられたり、破棄されたりするリスクがあります。
  • 法務局に預ける制度(別の記事で詳しく解説します)を使わない場合は、亡くなったあとに家庭裁判所での検認という手続きが必要になり、すぐには使えません。

「手軽だから」と選んだものの、無効になってしまっては元も子もありません。書く前に、書き方の基本を確認することが欠かせません。

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公正証書遺言:安心感と注意点

公正証書は、形式の不備で無効になる心配がほとんどなく、原本が公証役場に残るため紛失や改ざんの心配も小さい点が強みです。また、家庭裁判所の検認が不要なので、亡くなったあと比較的早く手続きに入れます。

さらに、2025年10月からは公正証書遺言の作成手続きがデジタル化され、状況によっては公証役場に出向かずウェブ会議で作成する道も開かれました。足を運ぶのが大変な方にとっては、選択肢が広がっています。

注意点は次のとおりです。

  • 作成には、財産の額などに応じた公証人の手数料がかかります。
  • 証人の確保が必要です(司法書士などの専門家に頼むこともできます)。
  • 内容を完全に誰にも知られずに作ることは難しくなります。

費用は財産の額によって変わるため、具体的な金額は公証役場や専門家に事前に確認するのが確実です。「費用がかかるから自筆で」と考える前に、無効や紛争で失うかもしれないものと比べて考えてみてください。

向いている人で選ぶ

表の「向いている人」を、自分の家に当てはめて考えるための軸が、次の3つの問いです。

  • 財産に不動産・自社株・事業用資産が含まれるか:分けにくい財産が多いほど、解釈の食い違いを避けるため、公正証書が向きます。
  • 家族関係に不安があるか:相続人同士の仲が複雑、内容に不満が出そう、という場合は、形式面で争われにくい公正証書が安心です。
  • まず気軽に意思を残したいか:財産がシンプルで、とにかく早く形にしたい、という場合は、自筆(できれば法務局保管)から始めるのも現実的です。

どちらを選んでも、遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)には注意が必要です。遺言で「全部を長男に」と書いても、ほかの相続人が遺留分を請求する可能性は残ります。

書いたあとに見直すタイミング

遺言は、書いて終わりではありません。次のような変化があったときは、内容を見直すサインです。

  • 相続人になる人が増えた・減った(結婚、出産、死亡など)
  • 不動産を売却した、買い替えた、事業を畳んだ
  • 財産を引き継がせたい相手との関係が変わった

自筆でも公正証書でも、新しい遺言を作れば、古い遺言のうち内容が食い違う部分は取り消されたものとして扱われるのが基本です。ただし、複数の遺言が残ると解釈が複雑になるため、書き直すときは古い遺言との関係を整理したうえで作ることが大切です。あわせて、なぜそう分けたのかという気持ち(付言)を添えておくと、残された家族が内容を受け止めやすくなります。

これから変わるかもしれない動き

遺言をめぐる制度は、いま見直しの途上にあります。報道や公的な議論では、パソコンやスマートフォンで作成し、法務局に保管する新しい方式(いわゆるデジタル遺言)を導入する構想が進められています。導入の時期や詳細はの段階です。

現時点で作れる方式の中から、今の自分に合うものを選んで早めに残すのが現実的です。新制度が始まったら、内容を見直せばよいのですから。

司法書士に相談するタイミング

遺言書の作成では、司法書士は次のような場面で力になれます。

  • 財産と相続人を整理し、遺言に書くべき内容の案を一緒に考える
  • 公正証書遺言を作るときの、公証役場との調整や証人の手配
  • 亡くなったあとの、不動産の名義変更(相続登記)までを見据えた書き方の助言

税金の見通しは税理士、家族間の争いが現に起きている場合の交渉は弁護士、と役割が分かれます。まずは「何から決めればよいか」を相談するだけでも、頭の中がかなり整理されます。どちらの方式が自分の家に合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。

まとめ

自筆証書遺言は手軽で費用も抑えられますが、不備や紛失のリスクがあります。公正証書遺言は手間と費用がかかるものの、無効になりにくく、検認も不要で、安心感が高い方式です。不動産や自社株が中心の家、家族関係に不安がある家は、公正証書を軸に考えるのが一般的です。迷うときは、まず財産と相続人を書き出すところから始めてみてください。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(司法書士)に確認してください。

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