ハラスメント防止の基本:相談窓口を機能させるコツ

目次

  1. ハラスメント対策は、会社の義務
  2. 会社が取るべき基本の措置
  3. 窓口が使われない3つの理由
  4. 窓口を機能させる5つのコツ
  5. 小さな会社でも続けられる形
  6. 相談を受けるときの心得
  7. 経営者が率先して示すもの
  8. まとめ

「うちには相談窓口があります」。そう言い切れる会社でも、実際に使われているかと聞かれると、答えに詰まることがあります。窓口を作ったものの、社員の相談がまったく来ない。それは平和だからではなく、相談しづらい空気があるからかもしれません。ハラスメント対策は、窓口を置いて終わりではなく、使われて初めて意味を持ちます。この記事では、ハラスメント防止の基本と、窓口を機能させるための運用のコツをまとめます。

ハラスメント対策は、会社の義務

職場のハラスメントについては、法律で会社に「防止のための措置」が義務づけられています。代表的なものは次のとおりです。

  • パワーハラスメント:労働施策総合推進法にもとづく措置義務。2022年4月から、中小企業にも義務となった
  • セクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法にもとづく措置義務
  • 妊娠・出産、育児休業・介護休業などに関するハラスメント:均等法や育児・介護休業法にもとづく措置義務

パワハラは、(1)優越的な関係を背景にした言動で、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えており、(3)働く人の就業環境が害されるもの、という3つの要素をすべて満たすものとされています。業務上必要な指導が、すべてパワハラになるわけではありません。

さらに、顧客や取引先からの迷惑行為(カスハラ)についても、会社が措置を取る義務を定める法改正が行われています(施行日は厚生労働省の公表で確認してください)。カスハラの詳しい整理は、法務の記事で取り上げています。

カスハラ対策が事業主の義務に:会社が決めておくこと

会社が取るべき基本の措置

厚生労働省の指針では、会社が取るべき措置が整理されています。基本の形は、どのハラスメントでも共通しています。

  1. 方針を明確にして周知する。ハラスメントを許さないという会社の姿勢を、就業規則や社内の文書で示す
  2. 相談の窓口を整備する。相談しやすく、適切に対応できる体制をつくる
  3. 問題が起きたら、迅速かつ適切に対応する。事実確認、被害者への配慮、行為者への対応、再発防止
  4. あわせて、プライバシーの保護と、不利益な取扱いの禁止を徹底する

最後の点が特に重要です。相談したことを理由に、不利益な取扱いをしてはならないと、はっきり示すことで、社員は安心して声を上げられます。

窓口が使われない3つの理由

窓口があるのに相談が来ない背景には、次のような理由がよくあります。

  • 誰に、どこへ相談すればよいかが分からない(周知の不足)
  • 相談したら、上司や加害者に知られそうで不安(秘密保持への不信)
  • 相談しても何も変わらないのでは、と諦めている(対応への不信)

つまり、窓口を機能させるには、「知っている」「安心できる」「変わると思える」の3つがそろう必要があります。

窓口を機能させる5つのコツ

実務で効く工夫を、5つに絞って挙げます。

1. 担当者を複数置く
男性・女性の担当者、人事と現場以外の人など、相談者が選べる状態にします。小さな会社なら、社外の専門家に窓口を委託する方法もあります。

2. 入口を広げる
ハラスメントに当たるかどうか微妙な段階でも、相談を受け付けると明示します。「こんなことで相談していいのかな」と迷う人ほど、早めに声を上げられると、深刻化を防げます。

3. 相談方法を複数用意する
対面、電話、メール、フォームなど、複数の手段を用意します。対面が苦手な人もいるため、匿名で受け付けられる方法があると、相談のハードルが下がります。

4. 相談を受けた後の流れを決める
聞き取りの方法、事実確認のやり方、行為者への対応、報告のルールを、あらかじめ文書にしておきます。担当者が迷わないことが、迅速な対応につながります。

5. 結果をフィードバックする
プライバシーに配慮しつつ、相談者には対応の状況を伝えます。何も返ってこないことが、不信感を生みます。

小さな会社でも続けられる形

「担当者を複数置く余裕がない」「専任の人事がいない」という会社も多いでしょう。その場合は、完璧を目指さず、次のような現実的な形から始められます。

  • 社内の窓口は社長以外の1〜2名にして、社外の相談先(専門家や外部の窓口)も併記する
  • 相談の受付票を一枚作り、記録の取り方を統一する
  • 年に一度、全員に方針を読み上げる機会をつくる
  • 相談があった場合の連絡先(社外の専門家)を、あらかじめ決めておく

規模が小さいほど、全員が顔見知りで、相談したことが周囲に伝わりやすいという悩みがあります。だからこそ、社外の窓口を併用することは、安心感につながります。

相談を受けるときの心得

窓口の担当者には、聞き方のトレーニングが必要です。

  • 否定せず、最後まで話を聞く
  • 「あなたにも原因がある」と評価しない
  • 事実(いつ、どこで、誰が、何を)を丁寧に確認する
  • 守秘義務を説明し、勝手に他へ伝えないことを約束する
  • 本人の希望(解決してほしいこと)を確認する

聞き取った内容は、本人の言葉でできるだけ正確に記録します。早く解決しようと焦って決めつけないのも大切です。

通報や相談の窓口づくりは、内部通報の仕組みとも重なる部分があります。

公益通報者保護法の改正:社内の通報窓口をどう整えるか

経営者が率先して示すもの

どれだけ制度を整えても、経営者や管理職の言動が伴わなければ、窓口は形だけになります。

  • 朝礼や社内報で、ハラスメント防止の方針を繰り返し伝える
  • 管理職向けに、指導とハラスメントの違いを学ぶ機会をつくる
  • 実際に相談があったとき、真摯に対応する姿勢を示す

そして、定期的に窓口の利用状況を見直すことも欠かせません。相談件数が少ないときこそ、アンケートなどで、社員の本音を拾う工夫が必要です。

職場の風通しを良くする考え方は、経営の基本でもあります。

まとめ

ハラスメント防止は、会社に課された法律上の義務であり、窓口の整備はその柱の一つです。窓口を機能させるには、周知、秘密保持、対応のフィードバックが欠かせません。担当者を複数置く、入口を広げる、相談方法を増やす、流れを決める、結果を伝える、という5つのコツを、自社の規模に合わせて取り入れてください。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(社会保険労務士)に確認してください。

ハラスメント防止の基本の図解:会社が取るべき措置と相談窓口の整備
相談窓口を機能させる5つのコツの図解:担当者・入口・方法・流れ・フィードバック

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