目次
1. 公益通報者保護法って、どんな法律?
2. すでに義務になっている「体制整備」
3. 2026年12月からの改正のポイント
4. 中小企業が最低限整えたいこと
5. 通報を受けたときの動き方
6. よくある誤解を3つ解いておく
7. まとめ
「うちは小さな会社だから、内部通報の仕組みなんて関係ない」。そう思っていませんか。実は、公益通報者保護法の改正が重なって、会社が整えておくべきことは年々はっきりしてきています。2026年12月には、さらに新しい改正の施行も控えています。通報窓口はつくって終わりではなく、社員が安心して使えて、会社が適切に動ける仕組みでなければ意味がありません。中小企業の経営者の目線で、押さえどころを整理します。
公益通報者保護法って、どんな法律?
公益通報者保護法は、会社の中で起きている法令違反を知った人が、通報したことを理由に不利益な扱いを受けないよう守るための法律です。たとえば、不正な会計処理や、安全基準の無視といった問題を、社内の窓口や行政機関などに知らせる場面を想定しています。
保護の対象になるのは、正社員やパート、アルバイト、派遣社員といった労働者のほか、役員や、退職して1年以内の人なども含まれます。通報したことを理由とする解雇などの不利益な扱いは禁止されています。
「通報者を守る」ことは、会社を守ることにもつながります。不正の芽を早い段階で社内で拾えれば、外部に出る前に是正できるからです。
すでに義務になっている「体制整備」
2022年6月1日に施行された改正で、事業者には内部通報に対応する体制の整備が義務づけられました。ポイントは、会社の規模で扱いが分かれることです。
- 常時使用する労働者が300人を超える事業者:体制整備が法的な義務
- 300人以下の事業者:努力義務(できるだけ整えるように求められる)
義務の中身は、おおむね次のとおりです。
- 通報を受け付ける窓口を設け、担当者を決める
- 通報の内容を調べ、必要な是正をする
- 通報者への不利益な取扱いを防ぐ
- 通報を担当する人に、守秘義務を課す(従事者の指定)
つまり、300人以下の会社でも「義務ではないから何もしなくてよい」とはなりません。努力義務でも、整えていなければ、いざ問題が起きたときに対応が後手に回ります。
2026年12月からの改正のポイント
さらに、2025年6月に公布された改正法が、2026年12月1日に施行されます。主な内容は次のとおりです。
- 解雇・懲戒への罰則の新設:通報を理由に解雇や懲戒をした場合、個人に6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、事業者に3000万円以下の罰金が科されます。
- 通報から1年以内の解雇・懲戒の推定:通報を理由としたものと推定され、会社の側が「別の理由があった」と示す必要が出てきます。
- フリーランスも保護の対象に:従業員を使わない個人事業主なども、通報者として守られます。
- 通報の妨害を禁止:「通報しない」という約束を求めたり、通報者を探し出そうとしたりする行為が、正当な理由なしにはできなくなります。
特に注目したいのは、通報者の探索の禁止です。「誰が言ったのか」を突き止めようとする行為は、善意のつもりでも許されなくなります。
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なお、実際に法律の対象になるのは、国民の生命や身体、財産などの保護にかかわる法律として定められた範囲の違反です。対象となる法律は多岐にわたるため、窓口では「これは法律の対象外だから」と門前払いにせず、まず内容を受け止める姿勢が望まれます。消費者庁が出している指針や解説資料も、社内規程づくりの参考になります。
中小企業が最低限整えたいこと
大がかりな仕組みは必要ありません。小さな会社でも整えやすい項目を挙げます。
- 窓口を決める:社内の担当者に加え、弁護士事務所などの外部窓口を使う方法もあります。社長に直結する窓口だけだと、社長自身の問題を通報しにくいため、複数ルートを用意すると安心です。外部窓口なら、通報する側も「社内の人に知られにくい」と感じやすく、利用のハードルが下がります。
- 社内規程をつくる:通報の受け付け、調査、是正、不利益取扱いの禁止、秘密の保持を、簡単でよいので文書にします。
- 担当者を決め、守秘を徹底する:通報者が誰か分かる情報を、必要な範囲を超えて共有しない約束をします。
- 従業員に周知する:窓口の場所や使い方を、掲示や社内メールなどで知らせます。
- 記録を残す:受けた通報と、対応の経緯を記録します。
とくに周知が抜けがちです。窓口があっても、従業員が知らなければ使われません。入社時の説明や、定期的な社内連絡で繰り返し伝えましょう。
通報を受けたときの動き方
実際に通報が来たとき、会社がどう動くかが問われます。基本の流れは次のとおりです。
- まず内容を受け止め、通報者の安全と秘密を守る
- 事実関係を、公正に調査する(関係者に利害がある人を調査に入れない)
- 違反があれば、是正し、再発防止策を講じる
- 通報者に、可能な範囲で対応の結果を伝える
ここで大切なのは、調べる人が公平であることです。社長や上司本人が関わる問題を、その本人が調べるのでは信頼されません。外部の弁護士などの力を借りる場面です。
また、通報者に対して、配置転換や評価の引き下げなどの不利益な扱いをしないよう、現場の管理職にも伝えておく必要があります。
よくある誤解を3つ解いておく
最後に、経営者からよく聞かれる誤解を整理しておきます。
- 「社員のうわさ話や悪口は、通報として扱われる」:保護の対象は、法律で定められた法令違反に関する通報です。ただし、扱いの線引きは難しいため、窓口ではまず内容を丁寧に受け止めるのが基本です。
- 「通報を受けたら、通報者を調べて対処しなければならない」:むしろ逆で、通報者を探し出す行為は避けるべきです。調べるのは「通報された事実」です。
- 「外部に出る前に、社内で止めたほうが得」:通報を握りつぶすと、外部への通報につながり、かえって大きな問題になりかねません。社内で受け止めて直すほうが、会社にとっては傷が浅く済みます。
まとめ
公益通報者保護法では、300人超の会社は体制整備が義務、300人以下は努力義務とされ、2026年12月1日には、解雇・懲戒への罰則の新設やフリーランスの保護、通報妨害の禁止などを含む改正が施行されます。小さな会社でも、窓口を決め、簡単な規程をつくり、従業員に知らせ、通報者の秘密を守る、という基本を整えておきましょう。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な判断は該当分野の専門家(弁護士)に確認してください。


