地域のイベントを続けたい。子ども向けの学びの場をつくりたい。趣味や専門性を生かした団体を、きちんとした形にしたい。活動が軌道に乗ってくると、こんな思いが芽生えます。そのとき浮かぶのが「法人にしたほうがいいのか」という疑問と、「NPO法人と一般社団法人、一般財団法人では、どれがいいのか」という迷いです。いずれも営利を目的としない団体のための法人ですが、つくり方も、運営のルールも、かなり違います。この記事では、三つの法人の設立の流れを比べながら、自分たちの活動に合う形の選び方を整理します。
なぜ法人にするのか
任意団体のままでも、活動は続けられます。それでも法人にする人が多いのは、次のような理由があるからです。
- 団体名義で、銀行口座や事務所の賃貸契約、業務委託の契約を結べる
- 代表者個人ではなく、団体として責任をもつ形になる
- 取引先や自治体、助成団体からの信用が高まる
- 人や資金が集まりやすくなる
一方で、法人になると、決算や届出、登記といった事務が増えます。「活動を続けるために必要な器」として選ぶのか、「規模を広げるための土台」として選ぶのか、目的を整理してから決めることが大切です。
NPO法人の特徴と設立の流れ
NPO法人(特定非営利活動法人)は、特定非営利活動促進法にもとづく法人です。保健や福祉、社会教育、まちづくり、子どもの健全育成など、法律の別表に定められた分野の活動を、不特定多数の人の利益のために行います。宗教の布教や政治活動が主な目的の団体は、NPO法人にはなれません。
NPO法人の大きな特徴は、設立に行政の認証が必要なことです。主な条件は次のとおりです。
- 社員が10人以上いること
- 役員として、理事3人以上と監事1人以上を置くこと(監事は理事や職員を兼ねられない)
- 報酬を受ける役員が、役員総数の3分の1以下であること
設立までの流れは、次のようになります。
- 定款、役員名簿、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書など、多くの書類を作成する
- 所轄庁(都道府県や指定都市)に認証を申請する
- 申請内容が2週間、公衆の縦覧に供される
- 縦覧期間が過ぎてから2か月以内に、認証か不認証かの決定が行われる(条例で短縮される場合がある)
- 認証後、法務局で設立登記をして、はじめて法人が成立する
- 登記をしたら、登記事項証明書などを添えて所轄庁に届け出る
認証から6か月以内に登記をしないと、認証が取り消されることがあります。書類の数も多く、申請から成立までには、数か月かかると見ておきましょう。成立後は、毎年、事業報告書などを所轄庁に提出し、これが閲覧される(情報公開される)決まりもあります。
一般社団法人の特徴と設立の流れ
一般社団法人は、一般社団法人法にもとづく法人です。行政庁の認証は不要で、公証人の認証と登記で成立します。NPO法人のような分野の制限もなく、目的を幅広く決められます。
設立の流れは、次のとおりです。
- 設立時社員が共同して、定款を作成する
- 公証人の認証を受ける(認証を受けないと定款は効力を生じない)
- 設立時理事などを選び、設立登記を申請する
行政の審査がない分、NPO法人に比べて、成立までの期間は短くなるのが一般的です。理事は1人からでも置けますが、理事会を置く場合は、理事が3人以上必要になります。
注意したいのは、「非営利」の意味です。一般社団法人でも、社員に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは、無効とされています。利益を出すことは構いませんが、出資者に配当する形はとれません。また、税金の面では、法人税法上の「非営利型」の要件を満たすかどうかで、課税の範囲が変わります。設立前に、税理士にも確認しておくと安心です。
一般財団法人の特徴
一般財団法人は、一般社団法人と同じ法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)にもとづく法人です。社員が集まってつくる社団型とは違い、設立者が財産を拠出して、その財産を基に設立するのが特徴です。
設立の流れは、設立者が定款を作成して公証人の認証を受け、財産の拠出を行い、設立時評議員や設立時理事などを選んで、設立登記を申請するという順序です。意思決定は、社員による総会ではなく、定款で定めた評議員や理事などの機関が担います。
また、設立者に剰余金や残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めが認められない点は、一般社団法人と同じです。拠出した財産を基に、腰を据えて事業を続ける活動に向いています。
3つの法人を比べて選ぶ
NPO法人と一般社団法人、一般財団法人の主な違いを、あらためて整理します。
| 比較項目 | NPO法人 | 一般社団法人 | 一般財団法人 |
|---|---|---|---|
| 設立の流れ | 所轄庁の認証を受けてから、法務局で設立登記 | 定款を作り、公証人の認証を受けて設立登記 | 定款を作り、公証人の認証と財産の拠出を経て設立登記 |
| 意思決定の仕組み | 社員10人以上が基盤で、理事3人以上と監事1人以上を置く | 設立時社員が共同して定款を作成し、理事は1人から置ける | 社員ではなく、定款で定めた評議員や理事などの機関が担う |
| 残余財産の扱い | 不特定多数の人の利益を目的とし、構成員への分配を前提としない | 社員に残余財産の分配を受ける権利を与える定款の定めは無効 | 設立者に残余財産の分配を受ける権利を与える定めは認められない |
| 向いている活動 | 多くの人を巻き込む活動や、行政・助成団体との連携を重視する活動 | 少人数で早く立ち上げ、収益事業も柔軟に行う活動 | 拠出した財産を基に、長期的に事業を行う活動 |

あわせて、活動分野はNPO法人では法律の別表にある分野に限られ、一般社団法人と一般財団法人では制限が少ないこと、情報公開ではNPO法人に事業報告書などの提出と閲覧の制度があることも、違いとして押さえておきましょう。
どの形を選ぶかは、団体の目的や規模で決まります。たとえば、地域の多くの人を巻き込んだボランティア活動を続け、行政や助成団体との連携を重視するなら、NPO法人が向いています。一方で、少人数で早く立ち上げたい、収益事業を柔軟に行いたい、という場合は、一般社団法人が候補になります。
なお、NPO法人には、一定の要件を満たして認定を受けると、寄付をした人が税制上の優遇を受けられる「認定NPO法人」の制度があります。寄付を集めたい団体は、将来の認定も視野に入れて検討するとよいでしょう。
活動目的、会員・社員の構成、資金の集め方を並べ、NPO法人・一般社団法人・一般財団法人を比較したい場合は、コミッターズへご連絡ください。活動内容や資金の集め方を伺い、比較の軸を整理します。
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設立前に決めておくこと
どちらの法人を選ぶ場合も、設立の前に、団体の中身を固めておく必要があります。決めておきたいのは、たとえば次のような点です。
- 団体の目的と事業内容(何のために、誰に向けて、何をするのか)
- 団体の名称と、主たる事務所の所在地
- 役員になる人と、社員(会員)になる人
- 事業年度(いつからいつまでを1年とするか)
- 収入の見込み(会費、寄付、助成金、事業収入など)
とくに目的の書き方は、定款に載り、のちの活動の範囲を決めます。広く書きすぎると何をしたいのかが伝わらず、狭すぎると、あとから事業を広げるときに定款の変更が必要になります。団体の名前や目的は、設立の手続きのなかでも、あとから変えにくい部分なので、じっくり話し合ってください。
定款の目的、機関設計、事業計画を設立後の運営に合わせて検討したい方は、コミッターズへお問い合わせください。設立前に決める事項を一緒に確認します。
頼める専門家の役割分担
設立には、複数の専門家が関わります。
- 行政書士:NPO法人の認証申請など、官公署に提出する書類の作成。定款などの書類作成の相談
- 司法書士:設立登記の申請(NPO法人も一般社団法人も)
- 税理士:非営利型法人の判断、会計や税務の相談
つまり、書類づくりと提出は行政書士、登記は司法書士と、段階によって頼む相手が変わります。どの士業に何を頼めるかは、早わかりマップにまとめた記事が参考になります。
団体を長く続けるには、活動と収益のバランスも欠かせません。事業としての続け方については、経営の視点から書いた記事もあります。
設立手続き後の会計・税務・運営体制まで見通して、相談する専門家を決めたい団体はコミッターズへご相談ください。必要な専門家と依頼範囲を整理します。
制度の原文と最新の要件は、特定非営利活動促進法と会社法と行政手続法で確認できます。
まとめ
法人にするなら、まず目的を整理することが先決です。NPO法人は行政の認証があり、社員10人以上などの条件がある代わりに、社会的な信頼を得やすい仕組みです。一般社団法人は、公証人の認証と登記で成立し、柔軟でスピーディーに設立できます。どちらも、書類づくりや登記など、複数の専門家の力を借りる場面が多いので、設立前に全体の流れと費用を相談しておくと安心です。どの法人の形が自分たちに合うか迷うときは、コミッターズまでお気軽にご相談ください。


